1人のαと2人のΩ

ミヒロ

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「...そうなんですね、え、えっと、その、お相手、女性の方ですか...?」

恐る恐る結月が聞いた。

何しろ、優磨と今まで会話した事が無かったからだ。

「女。職場の先輩なんだ。同じ美容師だけど、いつも叱られっぱなし。でも、すげー努力家で、後輩思いで...後輩のミスに一緒に頭下げて、バックヤードで泣いてる後輩、抱き締めて、励まして、そんな人」

「ようやく、こいつがまともになったってのに、穂高、まだ寝てんだもんな」

クス、と結月は茶化した拓磨を笑った。

「とにかく!穂高さんなら絶対、絶対、大丈夫だから!気に病むなよ!?」

「ありがとうございます、優磨さん」

突然、咲夜が泣き出した。それはそれは、部屋に響く大声だ。

「あー、こりゃ、ミルクか、オムツかな」

拓磨がソファ近くにある、史哉の出産の為に購入していたベビーベッドを覗き込み、結月が抱き上げる。

結月の腕の中で泣きじゃくる咲夜がいる。

「あ、どうしよう...オムツもミルクも...」

「ちょっと待って、史哉くん、後、任せても大丈夫?」

「はい、お義母さん」

パタパタと拓磨の母が駆け回り、オムツと哺乳瓶に入ったミルクとを持ってきた。

「あ、ありがとうございます、後は僕が...」

「いいの、いいの、結月くんはたまにはゆっくりしてて」

拓磨、優磨も見守る中、手際よく、オムツを替え、ミルクを飲ませる拓磨の母の姿に感嘆した。

「...やっぱり、慣れてますね」

「そりゃ、3人も産んで育てたもの。結月くんもまだ、子供は作るつもりでしょ?」

顔を赤らめながら、結月は頷いた。

「それがいいわ。子供は多い方がいいわよ、楽しいもの」

拓磨の母の腕の中で、安心したように、おとなしくミルクを飲む咲夜、拓磨の母の優しい笑顔に結月は心が安らぎ、癒された。
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