1人のαと2人のΩ

ミヒロ

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結月を1人に出来ず、史哉と拓磨は2人が住む、拓磨の自宅に誘った。

「子供もいるし、お邪魔じゃないかな...」

「そんな訳ないだろ。うちの母親、賑やかなの好きだし、多分、子供も好きな筈だよ」

運転する拓磨はそう言ってくれたが...結月は不安だらけだ。

3人の男の子を奥さんと育て上げ、

「子供好きですから、爺にもなって、赤子と触れ合えるとは光栄で御座います」

と有坂はミルクを作ったり、咲夜にミルクをあげたり、オムツを替えたり、あやしたりと時折、好意的に手伝ってくれるのだが...。

咲夜は、きゃっきゃと可愛らしく笑いながらも、有坂の顔は蹴るわ、髪は掴む、すぐに膨れっ面になり、大泣きしたかと思えば、また笑う。

「す、すみません、有坂さん」

と、結月は心底、謝罪するが、

「いやいや、とても元気な子で何よりで御座いますね」

結月に悟られまいと、咲夜に揉みくちゃにされた髪の毛で笑ってみせる。

結月はほとほと、自宅で有坂に頭が上がらない状態なのだ。

「着いたよ、結月」

後尾座席で咲夜の寝顔を見つめ、俯いていたら、助手席の史哉が振り向いた。

久しぶりの拓磨の実家だ。

穂高と訪れて以来。...その穂高は今日はいない。

リビングに通され、

「あら、おかえりなさい、神社は...。あら、結月くん、お久しぶりね」

「...お久しぶりです」

結月は咲夜を抱いたまま、小さく頭を下げた。

「この子が咲夜くん?イケメンくんね」

指しゃぶりしたまま、咲夜は拓磨の母の優しい眼差しを見上げる。

「...ごめんなさいね、結月くん。なかなか、お見舞いにも行く事が出来なくて。私と来たら、行ったら泣き出してしまいそうで...一番、泣きたいのは結月くんなのに、て、勇気が出なかったの」

伏せられた拓磨の母の瞳はとても穏やかながら、悲しげだった。
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