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しおりを挟む「...穂高のお父さん、なんだか、穂高に似てるね。いざとなると正義感、強くって、優しくて...だから、仲違いしちゃうのかな」
「似た者同士だから、てか...まさか、穂高の父親が毎日、穂高の顔を見に来るとはな」
穂高の父が去り、拓磨と史哉は、ベッドで眠る、穂高を見つめ、しんみりと語った。
「穂高が聞いたら、きっとびっくりするね」
「...聞こえてるよ、きっと。な?穂高」
拓磨は穂高の閉じた瞼に笑顔を向けた。
日増しに、結月は穂高に会えない時間を苦痛に感じ始めた。
「結月、残してるじゃないか。お腹の子の為にも栄養、摂らないと」
普通食になった結月だが、食事を半分近く残した。
「穂高先生は?会いたい」
「時期に会えるよ」
「時期に?時期にっていつ?もう5日経ってる」
言葉が見当たらず、拓磨は言葉を飲んだ。
と、その時、病室のドアが開いた。
穂高かと喜んだのも束の間、史哉だ。
「久しぶり、結月」
「...お久しぶりです、史哉さん」
「これ。懐かしいでしょ」
結月の目の前のテーブルに史哉はラ・フランスの入った袋を置いた。
「剥いてあげるから待ってて」
ようやく現実を受け止めた史哉が笑顔でラ・フランスを剥いていく。
結月は食欲不振だった自分の為に、穂高が史哉からいただいた、ラ・フランスを剥いてくれ、ピックに刺し、食べさせてくれた、あの甘い記憶を思い出していた。
「...穂高先生は、どこ...?」
「...心配しなくても、病院にいるよ」
史哉が一口サイズに切ったラ・フランスをピックに刺し、結月の口元に寄せた。
「多分、甘いよ、食べてみて」
ゆっくり口を開け、ラ・フランスを受け入れた。史哉の言う通り、とてもみずみずしく、甘かった。
「...ほんとだ、甘い...穂高先生にも食べさせたいな」
「...そうだね。あとで届けに行くよ」
泣かない、と決めていたのに、泣きそうになった史哉は思わず、顔を伏せた。
「史哉、悪い、飲み物、買って来てくれないか?ホットのブラック。結月は?」
結月は首を横に振った。
史哉を気遣い、拓磨は史哉を部屋から退室させたが、ドアの向こうで史哉は1人、泣いた。
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