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しおりを挟む遅ればせながら、結月の母が病院を訪れた。
拓磨はああ言ったものの、穂高と結月の病室はそう遠くはない。
結月の母が真っ先に訪れたのは穂高の病室だった。
頭に包帯を巻き、点滴、人工呼吸器をつけ眠る、穂高の姿を見て、放心し、足元が崩れた。
「ああ...なんてこと...」
穂高の父が立ち上がり、変わらず、髪の毛の手入れもしてはない、白髪混じりの結月の母を見つめた。
「あの子のせいで...結月が代わりになれば良かったのに...結月は目を覚ましたんでしょう、なんてずる賢い子...」
その一言に、穂高の父は静かに激昂した。
「穂高の代わりになれば良かっただと?我が子が一命を取り留めたというのに...貴方に母親の資格はない。結月くんが哀れだ」
穂高の父の声に、一瞬、硬直したが、
「あなたに!あなたに何がわかると言うの!あの子は手塩をかけて育てた立派なαになる筈だったのよ!それがあんな化け物に...!」
「化け物!?唯一の息子を化け物だと!?まさか、それを結月くんに話した訳じゃあるまいな」
結月の母がせせら笑った。
「ええ、話したわ。話したわよ。だって、化け物だもの。見た目は男の子なのに、お腹は大きくて、妊娠してるって言うのよ。気持ちが悪いとしか思えないでしょう?」
「2人が崖から落ちたのも理解できた。全ては貴方のせいだ!つまみ出せ!顔を見るだけで虫唾が走る!」
結月の母の喚き声で、ベンチに座っていた、拓磨と史哉が、看護師に両脇を抱えられ、連れ出されながら、狂ったように叫び、笑う結月の母の姿を見た。
「私のせいじゃない!全て、結月のせいよ!あの化け物のせいよ!」
拓磨と史哉は目を疑った。
「...結月の...お母さん...?」
拓磨と史哉は穂高の病室に入ると、穂高の父はスーツ姿で立ち上がったまま、渋い顔で固く、拳を握り締めていた。
「...女では無かったら殴っていたところだ」
その後、精神を逸した結月の母は精神科に強制的に入院となった。
結月の父は既に別居し、家庭崩壊していた。
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