1人のαと2人のΩ

ミヒロ

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久しぶりの実家は以前とはかなり変わってしまっていた。

チャイムを押してもなかなか結月の父も母も出ては来ず、

「留守なのかな?」

結月が数回チャイムを押し、出てきた母の変わりように呆然となった。

以前は綺麗に纏めていた艶のある長い髪はボサボサで、着崩れた服。
若い母が年老いて見えた。

「なんだ、来たの」

部屋に上がると、なんとか足の踏み場がある散らかり用。

「これ、つまらない物ですが」

穂高は決して顔には出さず、菓子折りを差し出したが、

「つまらない物なら持ってこないで、ゴミになるじゃない」

穂高の手にある菓子折りの袋を払い除け、床に飛ばされた。

「お腹の子は?」

「え、あ、うん、順調だよ」

結月は笑顔を作ってみせた。穂高の母のように、孫が気になるのだろうと。

「αの男の子なんでしょうね?」

「え....」

「だったら、うちの子よ。私の唯一の一人息子がαだったのだけど、Ωなんかに変異したの」

結月も穂高も言葉を失った。

「αの子だけでいいのよ、あの子の代わりに。あの子にはもう用はないわ。男なのか女なんだかわからない、男なのに妊娠する化け物だもの」

さすがの穂高も異常な結月の母に掛ける言葉が見当たらなかった。

結月がΩに変異したこと、そして、妊娠したことで、精神状態がおかしくなったとしか思えなかった。

「....ごめんなさい、母さん」

「母さん?私に息子はいないわ。化け物だけよ。お腹の子を私に預けたら好きにするといいわ。出来たら、私の目の届かないところでね」

結月は声もなく、泣いていた。

犯された際、優しく介抱してくれた母はもういない。

「...帰ろう、穂高先生」

「でも、お父さんに会わなくていいのか」

小声で話しかける結月を気遣い、穂高も声を抑えた。

結月が鼻を啜った。

「もういい。ここを離れたい」

「....わかった」

2人が背中を見せるが、結月の母の笑い声で見送られた。
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