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しおりを挟む月日は過ぎ、冬。
結月にとっては緊張と不安の幕開けでもあった。
「穂高先生のご実家にご挨拶行かないといけないですよね...?」
なにを着ていこう、なにを持っていこう、まだ14歳の結月だ、検討がつかないのは当たり前だろう。
俯きがちに呟く結月に穂高はふんわり微笑んだ。
「結月はなにも心配しなくていい。俺がいる」
結月の小さな頭に手のひらを置いた。
そんな穂高を結月はそっと見上げると、二人の視線が重なった。
そうして結月は頷く。
一生、なにがあろうと結月を守っていく、最初見たときの出会いから、穂高は心に決めていた。
運命の引き合わせだとしても、その気持ちに嘘はない。
ふう、ふう、と緊張を解す為に口を尖らせ、必死に息を整える助手席の結月に穂高は思わず笑った。
「タコの真似か?キスして欲しいのか?ラマーズ法の練習か?」
「違います!」
そうして、また口を尖らせ呼吸を整える結月にキスをした。
唇を離すと結月の呼吸はいつも通りに整った。
「ほ、穂高先生!運転中なのに!」
真っ赤な顔で照れくささから吠える結月にも穂高は笑った。
「心配しなくても赤だよ。隣の車には見られたかもな」
結月の赤らんだ顔が収まる事はない。
「穂高さんのバカ!」
月日を共に過ごすと共にかしこまった口調もかなり和らいだが、この日、初めて、結月は先生と呼ばなかった。
「あ!今、僕....」
「その方がいい。俺はもう校医じゃない、お前の旦那でお腹の中の父親だよ」
ようやく、結月が落ち着いた。
照れくささが頂点に立ち、縮こまったのだ。
着物の方がいいんじゃないか、という結月だったが、出産予定日まで間もなく、お腹も大きい為に、ゆったり目のセーターとデニムのシンプルな服装に穂高はさせた。
結月は白がよく似合う。
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