1人のαと2人のΩ

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
89 / 116

88

しおりを挟む

月日は過ぎ、冬。

結月にとっては緊張と不安の幕開けでもあった。

「穂高先生のご実家にご挨拶行かないといけないですよね...?」

なにを着ていこう、なにを持っていこう、まだ14歳の結月だ、検討がつかないのは当たり前だろう。

俯きがちに呟く結月に穂高はふんわり微笑んだ。

「結月はなにも心配しなくていい。俺がいる」

結月の小さな頭に手のひらを置いた。

そんな穂高を結月はそっと見上げると、二人の視線が重なった。

そうして結月は頷く。

一生、なにがあろうと結月を守っていく、最初見たときの出会いから、穂高は心に決めていた。

運命の引き合わせだとしても、その気持ちに嘘はない。

ふう、ふう、と緊張を解す為に口を尖らせ、必死に息を整える助手席の結月に穂高は思わず笑った。

「タコの真似か?キスして欲しいのか?ラマーズ法の練習か?」

「違います!」

そうして、また口を尖らせ呼吸を整える結月にキスをした。

唇を離すと結月の呼吸はいつも通りに整った。

「ほ、穂高先生!運転中なのに!」

真っ赤な顔で照れくささから吠える結月にも穂高は笑った。

「心配しなくても赤だよ。隣の車には見られたかもな」

結月の赤らんだ顔が収まる事はない。

「穂高さんのバカ!」

月日を共に過ごすと共にかしこまった口調もかなり和らいだが、この日、初めて、結月は先生と呼ばなかった。

「あ!今、僕....」

「その方がいい。俺はもう校医じゃない、お前の旦那でお腹の中の父親だよ」

ようやく、結月が落ち着いた。
照れくささが頂点に立ち、縮こまったのだ。

着物の方がいいんじゃないか、という結月だったが、出産予定日まで間もなく、お腹も大きい為に、ゆったり目のセーターとデニムのシンプルな服装に穂高はさせた。

結月は白がよく似合う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

処理中です...