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しおりを挟む「あ、ところで、有坂さん」
「はい、なんでしょう、結月様」
「有坂さんは穂高先生のこと、昔からご存知なんですよね?」
「ええ、それはもちろん」
有坂の笑顔に結月は続けた。
「その、昔の穂高先生って、どんな感じだったんですか?」
「昔の、と、申しますと」
「子供の頃の穂高先生です。あ、もちろん、史哉さんや拓磨さんもご存知なんでしょうが、一番、間近にいたのは有坂さんなんじゃ、と思って...」
躊躇いがちな結月に有坂は再び笑顔になった。
「利発で勝ち気なお子様でしたよ、学校が終わったら、幾つもの習い事の日々にも、穂高様は文句一つなく、お母様の指導の元、幼いながら、着物を着て、お茶を立てる姿も立派なものでした」
「まあ、単に器の持ち方や角度が違うと、手をひっぱたかられたり、厳しかったから、真剣にやらざるを得なかっただけだ」
穂高は眉を下げ、おちょこを傾けた。
「へえ...茶道かあ...着物姿の穂高か、様になりそうだね」
史哉が想像し、宙を仰ぐと、明らかに拓磨は不機嫌になり、史哉からおちょこを取り上げた。
「あっ、何すんの、拓磨」
「まあ、でも、がんじがらめで少々、不憫に思いまして。穂高様には教育係はおりましたが、穂高様にトランプをプレゼントした事が御座います」
「トランプを、ですか?」
結月、史哉や拓磨も目を丸くする。
「ええ。幾つかのカードゲームを教え、ルールを説明しましたところ、すぐに穂高様はルールを完璧に覚えられ...穂高様が勝ってしまうものですから....」
「あれは有坂が俺が子供だからと手を抜いたんだろう」
「いえ、全くです。大人気なくも、私も本気だったのですが、何度、どのゲームをしても穂高様が圧勝してしまうものですから....穂高様は、もういい!とお怒りになり、カードを投げ捨てられてしまい...」
有坂が苦笑し、
「手を抜いた訳ではなかったのか」
穂高は隣の有坂に驚愕の眼差しを向けた。
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