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しおりを挟む「いやあ、実に美味しゅう御座いますねえ、あ、改めまして、美希様、お誕生日おめでとう御座います」
有坂が屈託のない笑顔を美希に向ける。
「ありがとうございます、有坂さん」
「美味しいと言って頂き、嬉しいです。あ、でも、史哉さんの方の料理の方が凝ってますよね、この鯛の奴とか...」
結月が鯛を一匹使い、作った鯛のアクアパッツァを指差した。
「鯛のアクアパッツァね。結月のも美味しいよ」
もぐもぐ、料理を頬張り、スパークリングワインの入ったコップを片手に、隣の結月に話し掛けるのを、ふと、結月は気に留めた。
「史哉さん、大丈夫ですか?お酒。妊娠中なのに」
ごくん、と食べ物を飲み込んでから。
「妊娠してからずっとアルコール控えてるし、今日は特別に、て、拓磨にも赦しを得てるから」
「そうなんですね、でも、飲み過ぎないようにです」
「うん。ありがとう、結月」
ワインの入ったコップを口元に寄せ、史哉が微笑んだ。
「いやあ!しかし、楽しみで御座いますねえ!」
突然の有坂の大声に会話していた結月、史哉だけでなく、有坂を除く全員、拓磨とたまに談志しつつ、静かに飲んだり食べたりしていた穂高まで、ビクッと体が跳ねた。
アルコールと明るい場の雰囲気もあるのか、有坂がだいぶ、リラックスした様子だ。
「桜の木!あの桜の花が咲く頃には結月様も出産!いやあ、さぞかし、見事な桜になることでしょうねえ!」
気がつけば足を崩し、唸りながら先程まではワインをまるで緑茶の如き持っていたが、片手にし飲んでいる。
「えっ、あれ、桜の木なんですか!?」
美希が振り返り、緑葉の木を見つめる。
「花が咲かないと桜の木ってわかりづらいねえ」
史哉も振り返り、まだ緑葉の桜の木を笑顔で眺めた。
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