1人のαと2人のΩ

ミヒロ

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「でも、凄いな、綺麗」

庭を取り囲むようにプランターが並び、様々な花々で彩られ、少し離れた先には有坂が提案し、業者も手配し植樹された桜の木がある。

「いつも有坂さんが手入れしてくれて...」

結月は言うなり、美希の誕生日パーティーが行なわれている庭を微笑ましい、とばかりに笑顔で見つめ、部屋で立っている有坂に気がついた。

「有坂さん!有坂さんもどうぞ、座られてください!」

驚きの眼差しの後、

「いえ、お気持ちだけで充分ですので」

笑顔で遠慮する有坂に、

「料理も山のようにあるし、遠慮しないでくださいよ」

拓磨も笑顔で有坂を呼び、みんな笑顔で有坂が来るのを待っている。

「みんな有坂もと思ってるんだ、遠慮なんかせずに有坂も」

穂高の言葉に、

「...左様でございますか。...では、お言葉に甘えて、ご好意を承ります」

深々と頭を下げ、スーツ姿の有坂が庭へと向かう。

「そうかしこまんなって、おっさん」

軽く酔った拓磨が有坂をおっさん呼ばわりし、思わず、史哉はこら、と拓磨の手を引っぱたいた。

「おっさんはないでしょ、有坂さん!」

「ああ、悪い悪い、有坂さん」

しばし、有坂は苦笑しつつ、

「私も50代で御座いますし、おじさんに変わりはありませんから」

「さ、食べて食べて!て、私、少し手伝っただけだけど」

美希が紙で出来た使い捨ての皿を手渡し、

「なにを飲みますか?」

結月が笑顔で尋ねる。

「え、あ、では、オレンジジュースで」

「お酒は飲めないんですか?有坂さん」

史哉が尋ねると、

「いや、飲めるし、ワインが好きだったよな。遠慮なんかせずに有坂も飲め」

穂高も口元が綻んでいる。

「え、ああ、では、私は赤ワインを」

有坂に赤ワインをカップに注ぎ、結月は手渡した。
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