1人のαと2人のΩ

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
80 / 116

79

しおりを挟む
「でも、凄いな、綺麗」

庭を取り囲むようにプランターが並び、様々な花々で彩られ、少し離れた先には有坂が提案し、業者も手配し植樹された桜の木がある。

「いつも有坂さんが手入れしてくれて...」

結月は言うなり、美希の誕生日パーティーが行なわれている庭を微笑ましい、とばかりに笑顔で見つめ、部屋で立っている有坂に気がついた。

「有坂さん!有坂さんもどうぞ、座られてください!」

驚きの眼差しの後、

「いえ、お気持ちだけで充分ですので」

笑顔で遠慮する有坂に、

「料理も山のようにあるし、遠慮しないでくださいよ」

拓磨も笑顔で有坂を呼び、みんな笑顔で有坂が来るのを待っている。

「みんな有坂もと思ってるんだ、遠慮なんかせずに有坂も」

穂高の言葉に、

「...左様でございますか。...では、お言葉に甘えて、ご好意を承ります」

深々と頭を下げ、スーツ姿の有坂が庭へと向かう。

「そうかしこまんなって、おっさん」

軽く酔った拓磨が有坂をおっさん呼ばわりし、思わず、史哉はこら、と拓磨の手を引っぱたいた。

「おっさんはないでしょ、有坂さん!」

「ああ、悪い悪い、有坂さん」

しばし、有坂は苦笑しつつ、

「私も50代で御座いますし、おじさんに変わりはありませんから」

「さ、食べて食べて!て、私、少し手伝っただけだけど」

美希が紙で出来た使い捨ての皿を手渡し、

「なにを飲みますか?」

結月が笑顔で尋ねる。

「え、あ、では、オレンジジュースで」

「お酒は飲めないんですか?有坂さん」

史哉が尋ねると、

「いや、飲めるし、ワインが好きだったよな。遠慮なんかせずに有坂も飲め」

穂高も口元が綻んでいる。

「え、ああ、では、私は赤ワインを」

有坂に赤ワインをカップに注ぎ、結月は手渡した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

俺にとってはあなたが運命でした

ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会 βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂 彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。 その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。 それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

お世話したいαしか勝たん!

沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。 悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…? 優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?! ※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。

処理中です...