64 / 116
63
しおりを挟む優磨を除く全員で拓磨の家で夕飯を取った。
料理を覚えたい史哉はいそいそと拓磨の母と笑顔で料理を手伝う姿があった。
「もう遅いし、泊まっていって?」
という拓磨の母のご好意もあり、穂高と結月は拓磨に案内され、二階のゲストルームへ。
「穂高にはこれ。サイズは多分、大丈夫だろ。結月には美希から。XLのパーカー。これならお腹もキツくないだろうから、て」
拓磨からそれぞれ、部屋着も渡された。
「ありがとうございます、美希さんにもお礼、伝えておいてください」
両手でパーカーを抱きしめ、拓磨に頭を下げた。
「美希には明日でも、直接、礼を言うといいよ。困った事があったら、俺と史哉は斜め前の部屋だし、スマホに連絡くれてもいいから」
拓磨は笑顔で自分たちの部屋を指差した。
「ああ。ありがとう、拓磨」
「じゃ、ごゆっくり」
そうして、穂高と結月は2人きりになった。
パーカーに着替えた結月は、膝までの長さで素足が出る裾を引っ張った。
「いいよ、似合ってる」
「で、でも...恥ずかしいし、なんか、スースーするし....」
「いいって」
結月の手首を握ると穂高は自分の膝に座らせた。
「な?心配要らなかっただろ。アットホームな家庭だろ?」
「うん、明るくっていい家族なんだね」
「ああ....子供の頃さ。拓磨の家庭、て、今は亡くなったけど、祖父は政治家、父は日本で教師。格式ある家庭でさ」
遠い目の穂高を、膝の上で結月は見つめた。
「同じαなのに、あいつはいつも笑ってて。人の輪の真ん中にいて。当時の俺は人に関心なんて抱かなかった。なのに、何故か、拓磨だけは違ったんだ」
「....穂高先生が唯一、関心を抱いたのが拓磨さん?」
「ああ。余程の用がなきゃ、誰かに話しかけることもなかったのに。初めて、話しかけたのが、拓磨」
結月は穂高の話しを黙って聞いた。
「気の利いたこと、話せなくって。クラスの人気者、いや、同級生の、か。
そんな拓磨に、緊張して。やっと言えたセリフが、一緒に帰らない?だったんだ」
穂高が微かに笑って見せた。
「拓磨、一瞬、きょとん、となって。すぐに笑顔で、いいよ!て。途中、家に寄ってかない?て言われて、興味津々で拓磨の家、行った。明るく出迎えてくれて...また遊びに来てもいい?て拓磨に聞いたら、もちろん!て笑顔でさ。それから、拓磨と俺は友人になったんだ」
懐かしそうに笑みを零す穂高に結月は自分のことのように嬉しくなった。
3
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説


【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる