1人のαと2人のΩ

ミヒロ

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「にしても、まだ優磨くん、懲りてないみたいですね」

「そうなのよ。あの子の場合、ある種の病気なのかも。一体、いつ落ち着くのかしら」

実は拓磨、拓磨の母から、拓磨の2つ上の兄、βの優磨はバイセクシャルで手当り次第に男女と毎日のようにデートをしていることを穂高は聞かされた事がある。

鼻歌をふんふん歌いながら、優磨が部屋から出てくると、腕を組み、仁王立ちし、蔑んだ表情で見つめている穂高に出くわした。

もちろん、穂高は待ち構えていた。

『....優磨さん。あなたはβらしいですね』

『へ?あ、は、はい』

『僕や拓磨はαで、あなたとは違いますが、手当り次第、男女に手を出している、とお伺いしましたが、僕達と違い、男性を妊娠はさせませんが、傷つけてしまうことはあるかと思いますね』

『は、はい....そ、そうですよね....』

『女性を妊娠させてしまう可能性も否定出来ませんよね。僕がなにを言いたいかわかりますか?』

『ひ....避妊、ですか』

更に、穂高は蔑んだ目で冷ややかに優磨の目を見据えたまま続けた。

『....相手を1人に絞れ、て意味ですよ』

穂高の凄みに優磨は怯んだ。

『あ、で、ですよね、僕も今、運命の相手を探していまして....』

『運命の相手?』

『は、はい』

穂高はようやく口元に弧を描いた。

『早めにお願いしますね。被害者が増えないうちに』

『わ、わかりました』

このことは穂高は拓磨の母にだけ、報告済みだ。

「....いざとなったら、寝ている間にパイプカットしかないかしら」

「手伝いますよ、お母さん」

穂高と拓磨の母のやり取りにぎょっとする結月だったが、他の誰も気にとめる様子はない。

「これ、紅茶の葉が入ってるんだね、アールグレイ?」

「うん!ダージリンのも作ったんだけど」

「結月も食べなよ、ふわふわで美味しいよ」

史哉に笑顔で促され、結月は躊躇いながら、パウンドケーキにフォークを入れた。

「穂高はある意味、うちの番犬みたいなもんだから。親父も注意はするはするけど、お気楽なとこあるし、なにしろ、海外いるしさ」

知られざる穂高の一面に驚愕している結月に拓磨は説明し、ケーキを頬張った。

「でも、俺がここにいる間に彼氏は紹介しろよ?美希」

「うん、わかった...。なんだか、パパみたい、拓磨お兄ちゃん」

口を尖らせた後、パク、と美希はケーキを食べた。
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