57 / 116
56
しおりを挟む拓磨の家族と楽しい夕飯の時間を過ごした。
お喋りで盛り上がる拓磨の家族との夕飯、会話はない、ひたすら無言な我が家の夕飯。
史哉はまだ少し戸惑いながら、拓磨の母の手料理を食べた。
史哉の複雑な心境は史哉のちょっした表情で拓磨の母は汲み取った。
「お口に合うといいんだけど」
「美味しいです、凄く」
「うちは賑やかだし、少々、騒々しいところもあるけど、みんな仲良くやってるの。少しずつ、慣れていってくれたらいいからね」
拓磨の母も思いがけないセリフに史哉は視線を上げると暖かく見守るような拓磨の母の優しい眼差しがあった。
「うん!なんなら、ずーっと、うちに居て欲しいくらい!」
「それじゃ、2人があんまりよ、美希。せっかくの新婚生活を楽しめないじゃない。それに、一番、騒々しいのは美希、あなたよ」
美希に拓磨の母が笑いながら指摘した。
「えっ!私!?私かあ、まあ、元気で明るい、て捉えてて!史哉さん」
史哉は笑顔になった。
そうして、風呂も済み、2人は拓磨の部屋にいる。
「あー、明日のショッピング。穂高と結月も誘うかー?結月は特に子供が産まれたら、出かけるのも大変だろうしなあ」
ベッドに腰掛けた拓磨がスマホを操作する中、隣の史哉は拓磨を見つめた。
「....ねえ、拓磨」
「ん?」
「相当、モテててた、て本当?」
思いもよらない史哉からの質問に、え?と拓磨は隣の史哉を見る。
「あれは美希が大袈裟に言っただけだよ」
「....嘘だ」
「ほんとだよ。て、なんで、今更、そんなこと」
「知りたいんだもん!拓磨のこと!僕、穂高ばかり見てて、拓磨のこと、見ていなかった。だから、知りたいの、全部」
真剣な史哉だが、拓磨は頭を抱えた。
「....知りたい、てなにを」
「今まで何人に告白された?どんな人だった?付き合った人の数は?どんな人?僕も知ってる人?」
史哉は拓磨を質問責めにし、拓磨はため息をついた。
「ねえ、教えてよ。すっきりしないままじゃ嫌だ」
仕方なく、拓磨は切り出した。
「....告られた数は覚えてない。付き合ったのは4、5人くらい。普通の子。....お前が知ってるかどうかまで、俺もわからない、中学の同級生とか」
「中学の同級生....誰?教えて。僕、知ってるかも」
「知って、どうするよ」
拓磨は史哉を抱き寄せた。
「最終的に選んだのはお前なんだ。俺の過去とかどうでもいい。自分に自信、持て」
拓磨の言う通りだった。
史哉は周りから脚光を浴びる美青年ながら、自分に自信がある訳じゃない。
子供の頃の親から気に入られなかった過去、穂高に恋愛対象に見られなかった過去が邪魔していた。
「.....浮気しないでね」
拓磨の胸の中で史哉は俯き、小さく呟いた。
拓磨がモテてていたのは確実なのは史哉自身も本当はわかっていた。
「する訳ねーだろ。お前がいるのに」
拓磨は史哉の後頭部を優しく手のひらで包むように抱き、額にキスをした。
2
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる