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しおりを挟む拓磨の車で史哉は拓磨の実家に再度、戻った。
「新居が見つかるまで、史哉、うちに住まわせるから」
キッチンに立っていた母に拓磨が言うと、
「そう、いいんじゃない?私も家族が増えるのは大歓迎だし。息子がまた1人増えた気分」
史哉の家庭事情は拓磨から昔から聞いている拓磨の母は笑顔で振り向いた。
「服なり日用品なり、また買い行こう、明日でも。心機一転、て感じでさ」
ソファの隣に座る史哉に拓磨が提案した。
「うん」
「ただいまー!あれ!?史哉さんだー!」
拓磨の大学生の妹、美希が帰宅するなり、史哉を見つけ、声を上げた。
「しばらく、史哉くん、うちにいるから、よろしくね、美希」
「そうなんだ!」
跳ねるように史哉に近づき、くっついた。
美希は史哉の家庭事情は知らないが、史哉の美貌から、史哉のファンだ。
「早く、拓磨お兄ちゃんと付き合ってあげなよー、史哉さん」
何故か、史哉は昔から美希だけでなく、女の子に冷たい態度が取れない。
中学から性格が変わってしまってからもだ。
「えー、あー、付き合ってるんだ。お腹にも拓磨お兄ちゃんの子供がいるよ」
美希がガバ!と顔を上げた。
「ほんと!?やったじゃーん、お兄ちゃん!あ!」
なにかを思い出したように美希の顔が固まり、史哉だけでなく拓磨も美希の言葉を待った。
「優磨お兄ちゃん!優磨お兄ちゃんには気をつけてね!見た目はいいけど、単なる野生の熊だから!」
史哉が苦笑した。
「でも、確かにそうね。優磨には気をつけてね、史哉くん。あの子、好みの子には容赦がないし、寝込みは....大丈夫ね、拓磨の部屋で拓磨と一緒なら」
「ほんと!女にも男にも、節操ないし、やばいよね!ママ」
「そうね。あの子には私もほんと呆れるわ。何人、彼氏や彼女がいるのか、バラしてあげたい」
優磨が居ない中、美希と拓磨の母は言いたい放題だ。
「そ、そんなに、ですか」
拓磨の母のセリフに史哉が驚愕した。
「そうよー!日替わりでデートしてるもの。ほんと、困った子」
「ほんとは優磨お兄ちゃんより、拓磨お兄ちゃんのがモテるのにね!バレンタインのチョコの数も拓磨お兄ちゃんの方が凄かった!」
これまた、史哉には初耳で目を丸くした。
「そ、そうなの?」
「うん!拓磨お兄ちゃん、小学校から山のようにチョコ貰って、でも全部、頑張って食べてた!偉いでしょ!」
美希の明るい笑顔に、そうだね、と史哉も笑顔で答えながらも、ふつふつとジェラシーが湧き上がった。
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