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しおりを挟む食後の紅茶を煎れよう、と立ち上がった結月を穂高は制止し、キッチンに立っている。
「拓磨と史哉も紅茶でいいか?コーヒーもあるけど」
振り返った穂高はダイニングテーブルにいる2人に尋ねる。
「あー、俺はコーヒーで」
「僕は紅茶」
「あ、穂高先生。頂き物のクッキーが戸棚にあるから、お茶請けに」
振り向き穂高に結月が言う。
「戸棚?どこ?」
「んっとね...」
結月が立ち上がり、執事の有坂が休暇の後、お土産に、と渡したクッキーの箱の場所を教える。
「有坂さんから頂いたんだ」
「有坂から?」
「うん」
穂高がお茶を煎れる中、結月は穂高の傍らでクッキーの箱を開け、ナプキンを敷いた籠で出来た器に入れ替える。
「もうなんだか、夫婦みたいだね」
史哉は微笑ましい、とばかりに笑みを浮かべ、
「息、ぴったりだな」
2人の共同作業に拓磨も優しく笑う。
「もう、子供の名前は考えてあるの?」
食後のティータイムとなり、史哉がカップを口元に運びながら結月に尋ねる。
「いえ、まだです。性別もわかってないですし...でも、春に生まれる予定なので、春っぽいというか、そんな名前もいいかな、とは考えてます」
結月もカップを持ったまま、史哉に応える。
「春っぽい名前かあ...とりあえず、性別がわからないならまだ決められないな」
拓磨がクッキーを片手に言う。
「穂高は男の子と女の子、どっちがいいの?」
史哉が穂高に聞くと、穂高は即答だった。
「どちらでも」
そうして、優雅に紅茶を嗜む穂高に拓磨は言う。
「でも、穂高は兄弟いないし、跡取りを考えたら、やっぱり、男の子なんじゃないか?」
「いや、俺はそんなことより、五体満足に元気に産まれてくれれば、それでいい」
穂高らしいな、と史哉は秘かに思った。
「そんなことより、もう夜も遅いし、泊まっていくか?部屋なら余ってるし」
「でも、お邪魔じゃない?」
史哉が気遣うが、
「お前らの声で、結月を起こさないでくれたら、邪魔じゃない」
「僕たちの声...?」
「2人の営みは知らないけど、変にうるさくしなければいい、てことだよ」
平然と穂高が紅茶を飲みながら言い、史哉は顔を真っ赤にし、拓磨もさすがに照れた。
「さすがに、それはないよ、な、史哉」
「え?う、うん」
バツが悪そうに史哉はテーブルにあるカップを手に取った。
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