1人のαと2人のΩ

ミヒロ

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「夕飯、史哉さんと拓磨さんも良かったら食べて行ってください!」

ある程度、一段落し、結月が笑顔で2人を誘う。

「結月が作ったんだ。腹減ってるだろう?食べていけよ」

穂高が説明し、促した。

「結月が?それは気になるな。お言葉に甘えてご馳走になろうか?史哉」

「うん」

4人はキッチンと繋がった、ダイニングテーブルのある一室へ移動した。

キッチンに立ち、家政婦に盛り付けを教わりながら準備をする、エプロン姿の結月がいる。

煮込みハンバーグにポテトサラダ、かぼちゃのポタージュ。

家政婦に教わりながら丹念に作った手料理をトレイに乗せ、テーブルに運ぼうとしている結月を見て、史哉が立ち上がった。

「身重なんだから、結月は座っていなよ。僕が運ぶから」

結月を気遣い、史哉が結月からトレイを奪おうとする。

「あ、でも、史哉さんはお客様だし、僕も安定期に入っているし....」

「無理したら駄目だよ。本当にお腹の子になにかあったらどうすんの」

結月と史哉のやり取りに穂高が驚愕の眼差しを向ける。

「変わったな、史哉」

「だろ?」

拓磨がそんな史哉を見て微笑んだ。

「お前のお陰だろうな」

穂高が言うと、拓磨はいや?と首を傾げた。

「案外、史哉を変えたのは結月かも」

「結月か、なるほどな」

結局、史哉が料理を運び、テーブルに並べ、やることのない結月が穂高と拓磨が寛ぐ、ダイニングテーブルの椅子に腰掛けた。

一通り、並べ終え、穂高と結月、拓磨と史哉がそれぞれ隣同士に並んで座り、結月の手料理でのディナーが開始した。

「....美味しい!中、チーズ入ってるんだ。凝ってるね」

史哉が絶賛し、

「美味いな。この、かぼちゃのポタージュも手作り?なんか、ほっこりしていいな」

拓磨も素直に褒めた。

結月はただ、ひたすら照れて、顔を赤くしている。

「で?将来の旦那様、お味はいかが?」

史哉がにやけながら穂高に言う。

「120点満点」

史哉も拓磨も爆笑した。

「100点満点じゃないのかよ、ウケる」

「良かったね、結月。でも、偉いな。僕も頑張んなきゃ」

ナイフとフォークでハンバーグを切り分けながら、史哉が張り切った声。

「今度、料理、教えてよ、結月」

「僕も家政婦さんに教わったり、レシピ本を読んだりしながらだから、まだそんな」

「またまた謙遜して」

「いや、ほんとに」

結月と史哉のやり取りを穂高も拓磨も暖かく見守った。
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