1人のαと2人のΩ

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
41 / 116

40

しおりを挟む

リビングのソファで、電話を終えた穂高は、うーん、と宙を仰ぎ、唸りながらスマホを顎に当てた。

結月はキッチンで家政婦に着いて貰い、教わりながらエプロン姿で料理をしている。

後は煮込むだけとなり、結月はスリッパをパタパタと音を立てながら穂高の元へ向かった。

「料理はどうだ?」

「楽しいよ。ちなみに今日は煮込みハンバーグ」

エプロン姿で穂高の隣にちょこん、と座る。

「史哉さん、見つかった?」

穂高から史哉が行方不明、の話しを聞いていた結月が尋ねると、穂高は首を横に振った。

「拓磨にも聞いたけど、手がかりなし」

まさか、拓磨と一緒にいて、拓磨が史哉と居ることを話していないだけとは知らない穂高だ。

「あいつの事だから、気晴らしに海外でも行ってるんじゃないか?」

「だったら、拓磨さん、知ってる筈じゃない?」

「それはそうだな」

「僕が史哉さんと連絡先、交換していたらよかったかな」

突然の結月の声に穂高が驚きの眼差しを結月に向けた。

「お前と史哉がか?」

「うん」

「まあ、最近、仲良さそうだったけど....なんなら、番号教えるからLINEしてみるか?」

穂高の提案に、うん!と、結月は自分のスマホを取りに行き、穂高から伝えられる史哉の電話番号を登録し、早速、LINEの内容を考える。

「....どんな内容がいいかな」

「あいつがびっくりして、掛けてくるような内容?」

2人で結月の手にあるスマホを覗き込み、思案を練る。

結月の指が動き始めた。

内容を見ていくうちに、穂高の顔色が怪訝になっていく。

「....縁起でもない内容だな、また」

「演技だよ」

『史哉さん....僕、お腹の子供、流産しました。あんなに説得してくれたのにごめんなさい。穂高先生と別れる事になりました。今までありがとうございました。 結月』

一瞬で結月の考えた内容のLINEは史哉の元へと届く。

相変わらず、史哉はラブホテルの一室で、情事を終え、布団の上で寝転んでいた。

真っ先にソファに座っていた拓磨が史哉に届いたLINEに気づく。

「史哉、LINE、来てるぞ」

「んー、誰から」

「さあ、お前、登録してないんじゃ?自分で確認しろよ」

スマホを投げ渡された史哉は肩肘を付き、何気なく、LINEを開き....。

「なにこれ!」

思わず、飛び起き、叫んだ。

「どした?史哉」

史哉の元へ向かい、一緒にスマホを覗き込む拓磨も思わず、衝撃から口を抑えた。

「まぢかよ....嘘だろ....」

結月の考えた、史哉が掛けてくるであろう、その嘘なのだが。

「流産、て...ショックだろうな。にしても、なんでまた、穂高、別れるだなんて」

「穂高のやつ!」

流産で傷ついている結月をショックで投げ出したのかと、怒りに任せ、史哉は結月ではなく、穂高に電話を掛けた。

「....俺に来た」

なんの気なしに穂高はスマホを耳にすると、

「なに考えてんだよ!穂高の薄情者!」

「へ?」

「流産したから、て、結月を手放すとか、甘ったれるのもいい加減にしたら!」

あまりの怒声に思わず、穂高は吹き出した。

「それはどうも、心配ありがとう」

「なに、その余裕!」

穂高の隣で、結月が代わって、と声を掛け、スマホが結月に渡され、穂高から結月に交代した。

「あ、史哉さん、今何処にいるんですか?元気ですか?会いたいです」

「結月....」

てっきり、傷心からの言葉と史哉は思い込んだ。

「辛かったな、結月。僕は今、拓磨とラブホテルを転々としているよ。結月は大丈夫?」

スマホから漏れた史哉の声に穂高と結月は自然と見つめ合った。

「....拓磨のヤロー、隠してたな」

珍しく、穂高が拓磨に怒りを燃やした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

処理中です...