1人のαと2人のΩ

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
38 / 116

37

しおりを挟む

「おはよう、史哉」

先に目覚めたらしい拓磨はベッドの隣の布団の塊に挨拶をした。

「....おはよう」

思いがけず、塊から史哉のか細い声。

「なんだ、起きてたのか、史哉。布団に丸まってなにやってんだ?苦しくないの?」

「....いんだもん」

「なに?」

布団でくぐもり、声が聞き取れない。

「恥ずかしいんだもん!」

一瞬、ガバ!と顔を覗かせ叫ぶなり、また布団の中だ。

「ちゃんと覚えてんだな」

史哉は答えない、布団の塊と化している。

「ほら、起きて、飯食い行くぞ。出てこないとこうだ!」

拓磨は布団に手を入れ、史哉の脇だけでなく体中をくすぐった。

「や、やめて!くすぐったい!」

ようやく、史哉はプハ、と息をつき、布団から這い出した。

「可愛い奴め」

拓磨は思わず、寝起きの史哉の髪まで片手でグシャグシャにした。

その頃。

穂高の母の提案に、結月は戸惑っていた。

出産までに間に合わせないと、と、ベビー用品を三人で見に行来ましょう、と穂高づてに連絡があったのだ。

「....ベビー用品、て.....」

「母さんの言う通り、生まれてからでは遅いし、いいんじゃないか?」

「....まだ、男の子か女の子かもわからないのに?」

「あー、なんなら調べておけば良かったかな」

「そういうんじゃなくて」

俯いて元気のない結月に、マタニティブルー、てこの事だろうか、と母親からの受け売りの言葉を思い返していた。

結局、どちらが生まれてもいいし、どうせいずれは男女の子供を産むのだから、と穂高の母は奮発して、ベビーカーやおむつやおもちゃ。

着る物もピンクや水色や花柄やドット柄など、様々なベビー用品を買い漁った。

その全てが、いずれ生まれてくるだろう子供の為の部屋に穂高が宛がった一室に運ばれた。

嬉しい半面、一気に責任重大なハードルを上げられた気分の結月だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

処理中です...