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しおりを挟む「おはよう、史哉」
先に目覚めたらしい拓磨はベッドの隣の布団の塊に挨拶をした。
「....おはよう」
思いがけず、塊から史哉のか細い声。
「なんだ、起きてたのか、史哉。布団に丸まってなにやってんだ?苦しくないの?」
「....いんだもん」
「なに?」
布団でくぐもり、声が聞き取れない。
「恥ずかしいんだもん!」
一瞬、ガバ!と顔を覗かせ叫ぶなり、また布団の中だ。
「ちゃんと覚えてんだな」
史哉は答えない、布団の塊と化している。
「ほら、起きて、飯食い行くぞ。出てこないとこうだ!」
拓磨は布団に手を入れ、史哉の脇だけでなく体中をくすぐった。
「や、やめて!くすぐったい!」
ようやく、史哉はプハ、と息をつき、布団から這い出した。
「可愛い奴め」
拓磨は思わず、寝起きの史哉の髪まで片手でグシャグシャにした。
その頃。
穂高の母の提案に、結月は戸惑っていた。
出産までに間に合わせないと、と、ベビー用品を三人で見に行来ましょう、と穂高づてに連絡があったのだ。
「....ベビー用品、て.....」
「母さんの言う通り、生まれてからでは遅いし、いいんじゃないか?」
「....まだ、男の子か女の子かもわからないのに?」
「あー、なんなら調べておけば良かったかな」
「そういうんじゃなくて」
俯いて元気のない結月に、マタニティブルー、てこの事だろうか、と母親からの受け売りの言葉を思い返していた。
結局、どちらが生まれてもいいし、どうせいずれは男女の子供を産むのだから、と穂高の母は奮発して、ベビーカーやおむつやおもちゃ。
着る物もピンクや水色や花柄やドット柄など、様々なベビー用品を買い漁った。
その全てが、いずれ生まれてくるだろう子供の為の部屋に穂高が宛がった一室に運ばれた。
嬉しい半面、一気に責任重大なハードルを上げられた気分の結月だった。
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