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しおりを挟む史哉も史哉で苦悩していた。
穂高の一件を耳にし、史哉は内緒にしていたが、穂高と別れたことが両親にバレたのだ。
「どうして別れたんだ!史哉!」
地位のある家系の穂高と結婚すれば、我が家も安泰だ、と考えていた両親だ。
「うるさいな!僕は父さん達の為に恋愛している訳じゃないんだから、ほっといて!」
「史哉!」
両親の声を振りほどき、部屋に篭った。
穂高の家系の地位を狙って、穂高に近づいたんじゃない。
幼い頃、穂高の会社の開いたパーティで、まだ幼稚園くらいながら、半ズボンのグレーのスーツ姿に赤いリボンを付けた、小さな男の子が表情もなく、大人たちを眺めていた。
マネキンみたい、が第一印象だった。
話しかけても笑いはしない。
いつしか、穂高を笑わせたい、と史哉は思うようになり、次第にそんな穂高に恋をした。
穂高を笑わせられたのは自分ではなく、結月だったけれど、今は焼きもちもない。
二人の話しを聞いた今、素直に幸せになって欲しいと願っている。
史哉はふと、スマホを取り出し、電話を掛けた。
「おー、どうした、史哉」
聞き慣れた気さくで優しい声に安堵した。
「史哉?」
涙が溢れ、声が出せなかった。
「....まさか、泣いてるのか?史哉」
「な、泣く訳ないじゃん」
必死に涙を手の甲で拭い、笑ってみせた。
「やっぱり泣いてんじゃん」
「なんだよ、拓磨、お前はエスパーかよ」
そう口にするなり、ポロポロ、涙の粒が笑みを浮かべる頬を伝った。
「駆け落ちしない?拓磨」
「駆け落ち?いきなりどうした?なにがあった?」
「....言ってみただけ」
史哉が敢えて笑って言うが、拓磨はしばらく無言になった。
「変なこと言ってごめん、拓磨」
「....今から会えないか?迎えに行く。今、家か?」
「....うん」
そうして電話を切ると、拓磨は史哉の家へ車を走らせた。
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