33 / 116
32
しおりを挟む史哉も史哉で苦悩していた。
穂高の一件を耳にし、史哉は内緒にしていたが、穂高と別れたことが両親にバレたのだ。
「どうして別れたんだ!史哉!」
地位のある家系の穂高と結婚すれば、我が家も安泰だ、と考えていた両親だ。
「うるさいな!僕は父さん達の為に恋愛している訳じゃないんだから、ほっといて!」
「史哉!」
両親の声を振りほどき、部屋に篭った。
穂高の家系の地位を狙って、穂高に近づいたんじゃない。
幼い頃、穂高の会社の開いたパーティで、まだ幼稚園くらいながら、半ズボンのグレーのスーツ姿に赤いリボンを付けた、小さな男の子が表情もなく、大人たちを眺めていた。
マネキンみたい、が第一印象だった。
話しかけても笑いはしない。
いつしか、穂高を笑わせたい、と史哉は思うようになり、次第にそんな穂高に恋をした。
穂高を笑わせられたのは自分ではなく、結月だったけれど、今は焼きもちもない。
二人の話しを聞いた今、素直に幸せになって欲しいと願っている。
史哉はふと、スマホを取り出し、電話を掛けた。
「おー、どうした、史哉」
聞き慣れた気さくで優しい声に安堵した。
「史哉?」
涙が溢れ、声が出せなかった。
「....まさか、泣いてるのか?史哉」
「な、泣く訳ないじゃん」
必死に涙を手の甲で拭い、笑ってみせた。
「やっぱり泣いてんじゃん」
「なんだよ、拓磨、お前はエスパーかよ」
そう口にするなり、ポロポロ、涙の粒が笑みを浮かべる頬を伝った。
「駆け落ちしない?拓磨」
「駆け落ち?いきなりどうした?なにがあった?」
「....言ってみただけ」
史哉が敢えて笑って言うが、拓磨はしばらく無言になった。
「変なこと言ってごめん、拓磨」
「....今から会えないか?迎えに行く。今、家か?」
「....うん」
そうして電話を切ると、拓磨は史哉の家へ車を走らせた。
1
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》
市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。
男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。
(旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる