31 / 116
30
しおりを挟む史哉と拓磨が買ってきたケーキを全員で食べ、お茶を楽しんだ。
2人が帰った後も結月は笑顔が絶えず、穂高をホッとさせたが、一抹の不安が穂高にあった。
子供が生まれる前に結月を両親に会わせないといけない。
15歳、しかも、保健医と生徒で...。
なんて言われるか、そもそも、認めて貰えるか、穂高は不安に煽られた。
「穂高先生...?」
僅かな穂高の表情の変化も結月は勘づく。
「...結月。両親と会ってくれるか?結月のご両親にも改めて挨拶がしたい」
穂高の神妙な面持ちに、結月は頷いた。
まず、穂高は結月を連れて、自らの実家を訪れた。
医師会の理事や、結月の通う学校の責任者だけでなく、多方面に幅を利かせるやり手の父を持つ、穂高の実家はお城かと思わせるような豪邸だった。
結月はしばらく顔を上げ、その立派な佇まいに息を飲んだ。
結月にも穂高と同じく、容赦なく不安が襲った。
「大丈夫。結月ならきっと認めてくれる」
結月の不安を汲み取り、穂高は結月の手を強く握った。
前もって、両親には結月を連れて実家に行く事を伝えていた。
医者から受け取ったDNAの用紙の入った封筒を開け、中身に目を向けるなり、穂高の父は明らかに不機嫌になった。
「...穂高、14の子供に手を出すとは....」
呆れた、と言わんばかりの父に、穂高は頭を下げるしかなかった。
「すみません、父さん....」
そんな穂高を見るなり、慌てて結月も頭を下げた。
空気を変えたのは穂高の母だった。
「もういいじゃないの、あなた。2人とも頭を上げてちょうだい」
顔色を曇らせる穂高の父とは違い、穂高の母は明るく、穂高と結月に声をかけた。
「穂高の子供よ、あなた。結月くんだったかしら」
「は、はい」
「まだ若いから、まだ子供も出来るものね」
途端に結月は真っ赤になった。
穂高の、兄弟が必要だな、と考えてた、という呟きを思い出し、やっぱり親子だな、と結月は羞恥心の中、痛感した。
「結月くんが16になれば結婚できるわ、それまでよろしくね、結月くん」
結月は呆気に取られていた。
「ぼ、僕が結婚....?」
「穂高が旦那は嫌かしら」
ぶんぶん、結月は首を横に振った。
「あとは結月くんの親御さんと顔合わせしないといけないわね、ああ、楽しみ、穂高の子供だなんて」
穂高の母は本当に嬉しそうだ。
話しによれば、自分は穂高しか子宝に恵まれなかった為、結月に期待している、とのこと。
「孫は多いに越したことはないもの」
浮かれている穂高の母に結月は笑顔を作りながらも、たじろいだ。
そんな結月に穂高が笑いかける。
こっそり、穂高と結月は会話するかのように互いに笑顔を見せた。
2
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる