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しおりを挟む史哉と拓磨が買ってきたケーキを全員で食べ、お茶を楽しんだ。
2人が帰った後も結月は笑顔が絶えず、穂高をホッとさせたが、一抹の不安が穂高にあった。
子供が生まれる前に結月を両親に会わせないといけない。
15歳、しかも、保健医と生徒で...。
なんて言われるか、そもそも、認めて貰えるか、穂高は不安に煽られた。
「穂高先生...?」
僅かな穂高の表情の変化も結月は勘づく。
「...結月。両親と会ってくれるか?結月のご両親にも改めて挨拶がしたい」
穂高の神妙な面持ちに、結月は頷いた。
まず、穂高は結月を連れて、自らの実家を訪れた。
医師会の理事や、結月の通う学校の責任者だけでなく、多方面に幅を利かせるやり手の父を持つ、穂高の実家はお城かと思わせるような豪邸だった。
結月はしばらく顔を上げ、その立派な佇まいに息を飲んだ。
結月にも穂高と同じく、容赦なく不安が襲った。
「大丈夫。結月ならきっと認めてくれる」
結月の不安を汲み取り、穂高は結月の手を強く握った。
前もって、両親には結月を連れて実家に行く事を伝えていた。
医者から受け取ったDNAの用紙の入った封筒を開け、中身に目を向けるなり、穂高の父は明らかに不機嫌になった。
「...穂高、14の子供に手を出すとは....」
呆れた、と言わんばかりの父に、穂高は頭を下げるしかなかった。
「すみません、父さん....」
そんな穂高を見るなり、慌てて結月も頭を下げた。
空気を変えたのは穂高の母だった。
「もういいじゃないの、あなた。2人とも頭を上げてちょうだい」
顔色を曇らせる穂高の父とは違い、穂高の母は明るく、穂高と結月に声をかけた。
「穂高の子供よ、あなた。結月くんだったかしら」
「は、はい」
「まだ若いから、まだ子供も出来るものね」
途端に結月は真っ赤になった。
穂高の、兄弟が必要だな、と考えてた、という呟きを思い出し、やっぱり親子だな、と結月は羞恥心の中、痛感した。
「結月くんが16になれば結婚できるわ、それまでよろしくね、結月くん」
結月は呆気に取られていた。
「ぼ、僕が結婚....?」
「穂高が旦那は嫌かしら」
ぶんぶん、結月は首を横に振った。
「あとは結月くんの親御さんと顔合わせしないといけないわね、ああ、楽しみ、穂高の子供だなんて」
穂高の母は本当に嬉しそうだ。
話しによれば、自分は穂高しか子宝に恵まれなかった為、結月に期待している、とのこと。
「孫は多いに越したことはないもの」
浮かれている穂高の母に結月は笑顔を作りながらも、たじろいだ。
そんな結月に穂高が笑いかける。
こっそり、穂高と結月は会話するかのように互いに笑顔を見せた。
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