1人のαと2人のΩ

ミヒロ

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帰宅するなり、結月は検査結果を史哉に知らせたい、と言い張る。

穂高は史哉の性格を十二分に知っている為、気乗りしなかったが、史哉に連絡を入れた。

約一時間後、拓磨も連れて現れた史哉の顔には笑顔が浮かび、穂高を驚かせた。

「穂高の子供になってたんだって?」

「はい。史哉さんのお陰です。史哉さんが僕に教えてくれたから....」

「別に僕は大した事してないよ。途中でケーキ買って来たんだ。あとでみんなで食べようよ」

史哉に結月が笑顔で応える。

いつの間に仲良くなったんだ、と穂高は2人から目が離せない。

「触ってもいい?」

史哉が結月のお腹を優しく触る。

「...子供がいる、てどんな感じ?」

上目遣いで史哉が尋ねると、しばし、結月は考えた。

「最初はただただ怖いだけでした。でも...穂高先生の子供になっているのがわかるよりも前に、なんていうか...愛おしいような存在になっていて」

「へえ....ねえ」

史哉が不意に振り向いた。

「僕たちも作ろうよ、子供。若いパパ、ていいじゃない?」

史哉のコロコロとした笑顔、穂高は自分に言っているのかと思いきや、視線を辿ると拓磨に言っているようだった。

穂高も結月も唖然となっている。

「お前が子供を?想像つかないんだけど」

拓磨が困ったように笑う。

「あ、あの...史哉さんと拓磨さん、て....?」

「ああ」

と、史哉は立ち上がり、拓磨の腕に腕を絡ませた。

「付き合ってるんだ。拓磨が付き合ってくれ、てしつこくってさ」

「そ、そうなんですか....」

拓磨は口元に弧を描き、史哉をデコピンした。

「俺が告白したねえ、まあいいや、そういうことにしといてやるよ」

拓磨の優しい眼差しに、

「な、なんだよ、そ、それじゃ、僕が告白したってバレバレじゃない」

またもや、穂高も結月も唖然となったが、穂高だけは思わず、吹き出した。

「お前から拓磨に告白した、て自分で白状してるぞ、史哉」

途端、陶器のように白い顔が瞬く間に赤く染まった。
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