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しおりを挟む月明かりの下、史哉と拓磨は歩道橋を並んで歩いた。
「しかし、びっくりしたな」
「だよね、まさか、前世の繋がりがあっただなんて」
「そっちじゃなくて、まあ、もちろん、それもびっくりしたけど」
口元を緩ませ、拓磨が史哉を見る。
史哉はきょとんと拓磨を見返した。
「穂高が結月を番にしないんなら、お前のことだから、ラッキー!て、穂高に擦り寄るのかと思ったよ」
明らかに史哉が不機嫌な顔になった。
「僕はそこまで馬鹿でもないし、鬼でもないよ」
唇を尖らせて睨んでくる史哉に拓磨は優しく微笑んだ。
「...変わったな、史哉」
「...そう?」
「丸くなった。ついこの間まで刺々しくて気性は荒いは、...穂高にだけは違っていたけどな」
史哉は遠い目をした拓磨の横顔を見つめた。
「...そうなんだよね。気がついちゃったんだ。僕、てかなりの自己中だし、我儘だし、
自分を中心に世界は回ってる、そんな風なのに、唯一、そんな僕の話しを親身に聞いてくれて、たまに叱ってくれる変わり者がいるんだよね」
史哉を振り向いた拓磨が真顔になった。
「穂高には僕が付き纏って、本当を言うと、必死だったから、たまに疲れてた、その人といたら不思議。ありのままでいれる。素の自分を受け入れてくれる...ほんと、変わり者」
そこまで言うと史哉は頬を赤らめ、照れ臭さを隠すように夜空を見上げた。
思わず、拓磨は吹き出した。
「な、なんで笑うんだよ」
「いや、お前らしいな、て思って」
視線が合うと、史哉も吹き出した。
「自然と傍にいてくれた」
「今頃、気がついた?」
「...もう遅い?」
史哉が不安げに眉をひそめた。
「ああ、もう遅いよ、俺にはもう好きなやつがいる」
途端に史哉は悲しくなった。
いつしか心を開いていた、唯一の存在は拓磨だった....。
気兼ねなく、なんでも話せ、人当たりの悪さから、史哉はただ、遊ぶだけの友人はいても、親身になって話しを聞いてくれる相手は拓磨だけだと少しずつ気がついた。
「....そうなんだ....穂高に言われた通りだ...」
「穂高に....?」
「自分...穂高といた時間が長かったぶん、周りを見ていなかったんじゃないか、て、ほんと、その通りだ....」
「....ごめんな」
「いいよ、仕方ない、自分の過ちだもん...どんな人、その好きなやつ、て」
「小学校で出逢ったときは天使かと思ったよ。穂高に笑顔、振り撒いててさ。でも、俺にはだいぶ愚痴は垂れる、少しは穂高のときのように笑顔見せてくれないもんかね、と常々思う、そんなやつ」
「...それって....」
史哉が目を丸くし、複雑な面持ちで拓磨を見た。
拓磨は史哉の目を見据え、笑った。
「...お前だよ」
「....ひっど!あんまりじゃない、その説明!てか、騙した!」
「いつも俺にはどうだっていい愚痴聞いてやってんだ、たまにはいいだろ?」
拓磨が不屈な笑みで史哉を見る。
史哉は穂高に見せていたような花が開くかのような笑顔になった。
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