1人のαと2人のΩ

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
27 / 116

26

しおりを挟む

月明かりの下、史哉と拓磨は歩道橋を並んで歩いた。

「しかし、びっくりしたな」

「だよね、まさか、前世の繋がりがあっただなんて」

「そっちじゃなくて、まあ、もちろん、それもびっくりしたけど」

口元を緩ませ、拓磨が史哉を見る。

史哉はきょとんと拓磨を見返した。

「穂高が結月を番にしないんなら、お前のことだから、ラッキー!て、穂高に擦り寄るのかと思ったよ」

明らかに史哉が不機嫌な顔になった。

「僕はそこまで馬鹿でもないし、鬼でもないよ」

唇を尖らせて睨んでくる史哉に拓磨は優しく微笑んだ。

「...変わったな、史哉」

「...そう?」

「丸くなった。ついこの間まで刺々しくて気性は荒いは、...穂高にだけは違っていたけどな」

史哉は遠い目をした拓磨の横顔を見つめた。

「...そうなんだよね。気がついちゃったんだ。僕、てかなりの自己中だし、我儘だし、
自分を中心に世界は回ってる、そんな風なのに、唯一、そんな僕の話しを親身に聞いてくれて、たまに叱ってくれる変わり者がいるんだよね」

史哉を振り向いた拓磨が真顔になった。

「穂高には僕が付き纏って、本当を言うと、必死だったから、たまに疲れてた、その人といたら不思議。ありのままでいれる。素の自分を受け入れてくれる...ほんと、変わり者」

そこまで言うと史哉は頬を赤らめ、照れ臭さを隠すように夜空を見上げた。

思わず、拓磨は吹き出した。

「な、なんで笑うんだよ」

「いや、お前らしいな、て思って」

視線が合うと、史哉も吹き出した。

「自然と傍にいてくれた」

「今頃、気がついた?」

「...もう遅い?」

史哉が不安げに眉をひそめた。

「ああ、もう遅いよ、俺にはもう好きなやつがいる」

途端に史哉は悲しくなった。

いつしか心を開いていた、唯一の存在は拓磨だった....。

気兼ねなく、なんでも話せ、人当たりの悪さから、史哉はただ、遊ぶだけの友人はいても、親身になって話しを聞いてくれる相手は拓磨だけだと少しずつ気がついた。

「....そうなんだ....穂高に言われた通りだ...」

「穂高に....?」

「自分...穂高といた時間が長かったぶん、周りを見ていなかったんじゃないか、て、ほんと、その通りだ....」

「....ごめんな」

「いいよ、仕方ない、自分の過ちだもん...どんな人、その好きなやつ、て」

「小学校で出逢ったときは天使かと思ったよ。穂高に笑顔、振り撒いててさ。でも、俺にはだいぶ愚痴は垂れる、少しは穂高のときのように笑顔見せてくれないもんかね、と常々思う、そんなやつ」

「...それって....」

史哉が目を丸くし、複雑な面持ちで拓磨を見た。

拓磨は史哉の目を見据え、笑った。

「...お前だよ」

「....ひっど!あんまりじゃない、その説明!てか、騙した!」

「いつも俺にはどうだっていい愚痴聞いてやってんだ、たまにはいいだろ?」

拓磨が不屈な笑みで史哉を見る。

史哉は穂高に見せていたような花が開くかのような笑顔になった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

処理中です...