26 / 116
25
しおりを挟む史哉は疑問に思いながら、結月と、そして、子供を宿す結月のお腹とを見つめた。
「....わざわざ、互いに不幸になる為に転生し、巡り会う、て、そんなこと、有り得るのかな....」
史哉は独り言をボヤキ、表情を曇らせた。
「....過去に、子供はいなかったんだよね....?」
思考を巡らせていた史哉が紐解いた。
「....はい」
「子供さえいれば、当時、穂高も孤独なまま、生涯を終えることはなかったはず....ということは....」
史哉を見つめる結月の瞳はただひたすら、まっすぐだ。
「....今世ではその子がいる。当時、穂高が年下だった、と言っていたよね?....事故などが無ければ、年齢だけを考慮すれば、今世で先に死ぬのは穂高だ。
残されるのは結月になるけれど....。どちらにせよ、2人には子供がいる。前世のような不幸はないんじゃないか....?」
クイズを解くように史哉は思案し、声にするなり、結月は目を見開いた。
ふと、自分のお腹に視線を落とす。
「....確かに....。穂高先生は子供が出来ないことを当時、とても悩んでいて....もし子供がいたなら、少しは穂高先生の孤独は和らいだのかもしれない....」
「...父親は穂高じゃないにせよ、片方の遺伝子は結月のものだ、互いに悲しみも薄れるんじゃないかな....」
父親は穂高じゃない....。
その言葉に結月は医師からのセリフが蘇り、動揺した。
「....結月....?」
「....話していいのか....わからない....」
結月は穂高の恋人だった、穂高を思う史哉を前に躊躇った。
「....話してくれないと僕も前に進めない」
困惑する結月の瞳と凛とした強気な史哉の瞳が交錯する。
かなりの沈黙を置いたあと、言葉を待っているかのように視線を逸らさない史哉に致し方なく、結月は医師から告げられたことを話した。
「....穂高の遺伝子と入れ替わっているかもしれない....!?」
「....確実ではありませんし、検査もした訳じゃ無いですし....」
「どうして検査しない訳!?」
思わず、史哉は立ち上がった。
「前世の記憶があるんなら、穂高を孤独にさせてしまった、そう思うんなら、検査する方が妥当なんじゃない!?」
「....でも、もし、違っていたとしたら」
「そうだとしても!検査が出来るうちに検査しようとは思わないの!?不慮の事故にでも穂高があって、検査が出来なくなってからでは遅いと思うんだけど!?」
史哉の怒声に結月も気付かされた。
穂高の子供になっていなくてもいい、元気に産まれてくれればそれで....穂高の気持ちを無視した自分勝手な考えだ。
もし、穂高の遺伝子に変わっていたら、父親は穂高になっている。
もし、今世でどちらが先に旅立とうとも、互いに孤独な人生を歩む必要は無くなる....。
「....カルマなんかじゃない。前世を修復する為に再び、出逢ったんじゃないの?」
史哉はゆっくり呟くように結月に語りかけた。
1
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》
市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。
男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。
(旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる