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しおりを挟む史哉は疑問に思いながら、結月と、そして、子供を宿す結月のお腹とを見つめた。
「....わざわざ、互いに不幸になる為に転生し、巡り会う、て、そんなこと、有り得るのかな....」
史哉は独り言をボヤキ、表情を曇らせた。
「....過去に、子供はいなかったんだよね....?」
思考を巡らせていた史哉が紐解いた。
「....はい」
「子供さえいれば、当時、穂高も孤独なまま、生涯を終えることはなかったはず....ということは....」
史哉を見つめる結月の瞳はただひたすら、まっすぐだ。
「....今世ではその子がいる。当時、穂高が年下だった、と言っていたよね?....事故などが無ければ、年齢だけを考慮すれば、今世で先に死ぬのは穂高だ。
残されるのは結月になるけれど....。どちらにせよ、2人には子供がいる。前世のような不幸はないんじゃないか....?」
クイズを解くように史哉は思案し、声にするなり、結月は目を見開いた。
ふと、自分のお腹に視線を落とす。
「....確かに....。穂高先生は子供が出来ないことを当時、とても悩んでいて....もし子供がいたなら、少しは穂高先生の孤独は和らいだのかもしれない....」
「...父親は穂高じゃないにせよ、片方の遺伝子は結月のものだ、互いに悲しみも薄れるんじゃないかな....」
父親は穂高じゃない....。
その言葉に結月は医師からのセリフが蘇り、動揺した。
「....結月....?」
「....話していいのか....わからない....」
結月は穂高の恋人だった、穂高を思う史哉を前に躊躇った。
「....話してくれないと僕も前に進めない」
困惑する結月の瞳と凛とした強気な史哉の瞳が交錯する。
かなりの沈黙を置いたあと、言葉を待っているかのように視線を逸らさない史哉に致し方なく、結月は医師から告げられたことを話した。
「....穂高の遺伝子と入れ替わっているかもしれない....!?」
「....確実ではありませんし、検査もした訳じゃ無いですし....」
「どうして検査しない訳!?」
思わず、史哉は立ち上がった。
「前世の記憶があるんなら、穂高を孤独にさせてしまった、そう思うんなら、検査する方が妥当なんじゃない!?」
「....でも、もし、違っていたとしたら」
「そうだとしても!検査が出来るうちに検査しようとは思わないの!?不慮の事故にでも穂高があって、検査が出来なくなってからでは遅いと思うんだけど!?」
史哉の怒声に結月も気付かされた。
穂高の子供になっていなくてもいい、元気に産まれてくれればそれで....穂高の気持ちを無視した自分勝手な考えだ。
もし、穂高の遺伝子に変わっていたら、父親は穂高になっている。
もし、今世でどちらが先に旅立とうとも、互いに孤独な人生を歩む必要は無くなる....。
「....カルマなんかじゃない。前世を修復する為に再び、出逢ったんじゃないの?」
史哉はゆっくり呟くように結月に語りかけた。
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