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しおりを挟む結月も不思議と瞼を閉じ、穂高の肩に手を回し、舌を絡ませていた。
穂高は結月と激しくはないが、求め合うようなキスに瞼を閉じていたが、不意に涙が溢れ、結月の頬に零れ落ちた。
頬に落ちた穂高の涙の感触に結月はゆっくり瞼を開け、穂高の瞳を見つめた。
「...あの頃、俺がΩだったんだ....。俺を置いて結月は死んだ....。結月が死んで、俺、俺は....」
穂高の瞳から涙が溢れ、結月の頬に落ちたとき、結月もまた、昔の記憶が蘇っていた。
「僕...僕は....穂高先生の番だった....」
ずっと寝付けない夜を過ごしてきた。
特に穂高は夜が嫌いだった。暗闇はまるで自分を孤独の淵に追いやるようだった。
結月もまた、穂高と眠ると安らぎ、落ち着いた。
2人は口付けと同時に、前世では当時、結月は穂高より年上のαであり、穂高は当時、結月よりも年下のΩだったことを思い出した。
「...もう俺を置いて逝かないで....」
結月を見つめる穂高の瞳から涙が溢れ、止まらなかった。
結月を放っておけず、傍にいたい、と何故か心底、願っていた。
単に、自分の不始末だから、という訳だけでは無かった。
2人が前世で番だった頃、結月は病気で穂高を置いて先に亡くなってしまい、穂高は途方にくれ、孤独な人生を歩んだ。
前世で結月と穂高は喧嘩1つしたことがない、とても仲の良い番であった。
前世で結月を失い、孤独なまま生涯を終えた、当時はΩだった穂高は、今世で、前世で叶わなかった、結月との時間を補っていたのだ。
結月は穂高を抱きしめた。
「置いていかない、もう置いていかないよ」
結月も自分が穂高に看取られる前世の記憶が脳裏に蘇っていた。
横たわる自分の手のひらを当時、自分より年下だった穂高が包み込むように握っていてくれた。
結月にとっても穂高はかけがえのない存在であり、息を引き取るまで、穂高を愛し続けていた。
再び、2人の唇が重なると、結月の全身から柔らかい優しい大輪のような香りが放たれ、穂高の心や体内にも優しく癒され、そして、穂高の中の雄、が突き動かされた。
結月の唇から首筋に舌を這わせているうちに無意識に結月の喉元を噛んだ。
「穂高先生...!」
番の証を無意識に付けたあと、穂高は初めて、淡く柔らかいヒートした結月の体に反応した。
パジャマを脱がせ、乳首を舌でなぞり、掛け布団を優しく剥がした。
互いに全裸になり、穂高は結月の脚を掲げ、アナルに舌を這わせた。
「あ、ああ...っ」
頬が紅潮した結月から甘い吐息が漏れた。
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