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「ぼ、僕、ハリセンがなかったら、元に戻っちゃう...」

涙目になった蓮太に慶太はぎょっとした。

「ハリセンで保ってきたのに!返してー!」

「やだー。てか、そういえば。ハリセンを手にするまで、蓮太、泣き虫だわ、弱虫だったっけ...?」

慶太が首を傾げながら宙を仰いだ。

「そうだよぉ....お兄ちゃんが8歳の頃、父さんと相撲行くまで、お兄ちゃんは僕のヒーローだったのに....」

ポロポロと蓮太の頬を涙が伝う。

「僕がレンタル、ていじめられたり、パシリにされたり、その度、僕は部屋で泣いた。お兄ちゃんはそれを見るなり、お兄ちゃんに任せろ!お兄ちゃんが助けてやるっ!て....」

「あー、思い出した。蓮太をいじめたら許さない!僕をやっつけてからにしろ!て、結局、僕もボロボロにされたなー」

「そ、そんなお兄ちゃんでも、う、嬉しかった...でも、相撲を見に行ってからはお兄ちゃん、力士さんに夢中になって....」

「蓮太を放ったからしにしてたなー」

「だから、ハリセン返して...ハリセンがあれば強くなれるから、僕」

「嫌ですー」

蓮太が、うっうっ、と泣きじゃくり出した。

「蓮太は僕が守るから返しませーん」

蓮太を見ないまま、慶太があっけらかんといつも通りの口調。

え、と涙目の蓮太の瞳が丸くなる。

「あー、ポスター、剥がすの、手伝ってくれるー?蓮太」

「い、いいの...?」

「うん、大切なものはなにか、わかった気がするー」

「....抱き締めていい?」

「蓮太、αだから、嫌だ」

「なんで!?」

「襲われそうだからー。僕、まだ、一度もヒート来てないから怖いもーん」

「....わかった。じゃ、手、繋いでいい?」

慶太が蓮太を見、笑顔を見せると、手を差し出した手に、蓮太はそっと自身の手を重ねた。


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