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しおりを挟む電車に乗り、遊園地に着いた僕と兄。
いざ、遊園地の目前まで来て、失敗した...と呆然と立ち尽くした。
「どうした?奏斗」
隣に並ぶお兄ちゃんが不思議そうに見下ろしてくる。
...お兄ちゃんは覚えていないのだろうか。
子供の頃に遊園地に来たとき、兄はジェットコースターに乗ったはいいが、戻ってきた瞬間、もつれそうな足取りでそのまま気絶し、ぶっ倒れた。
高所恐怖症なこともわかり、観覧車の中で泣いていた。
僕は観覧車からの眺めを見る余裕はなく、兄を宥めることに徹した。
当時、僕は小1、兄、優斗は小2だった。
明らかに兄が楽しめるアトラクションは少ないのだけど...。
「か、帰ろうか?お兄ちゃん」
初デートと言えば、遊園地!だなんて、うっかりしていた僕が悪い。
「せっかく来たのに?」
きょとん、と僕をお兄ちゃんは丸い目で見つめるけど。
お兄ちゃんが乗れるアトラクション無いでしょ、とは言えず。
「ほら、行こ、奏斗」
お兄ちゃんに手首を掴まれ、遊園地のゲートを潜ることとなった。
考えてみたら、遊園地のあの日から相当な年月が経っているんだし、兄も成長したのかもしれない。
絶叫マシンも観覧車も克服し、たかと思ったのだけど。
「うわあ!楽しそう!」
ジェットコースターを目の前に僕は瞳を輝かせ感嘆の声を上げた。
「ね!お兄ちゃ...」
隣のお兄ちゃんは顔面蒼白の怯えた顔でジェットコースターを見上げていた。
「あ、やっぱり、あれだね、ジェットコースターなんて乗りたくないな、他のアトラクションを...」
慌ててパンフレットを広げた僕だったが、兄にパーカーの裾を引っ張られた。
「だ、大丈夫、いける」
「え?あ、その、無理しなくていいから、お兄ちゃん」
「無理なんてする訳ないだろ、奏斗が乗りたいんだから、乗らなきゃ、来た意味がない」
意気込んだ様に釘付けになりつつ、列に並ぶことになった。
隣を見ると、必死に瞼を閉じ、両手を合わせ、無言で唇を噛む兄の姿がある。
なにに拝んでいるのかはわからないけど...そんなに怖いのに、僕の為に...。
きゅん、とした僕はお兄ちゃんの手を繋げないのがなんだか悔しくもどかしい。
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