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しおりを挟む大悟の運転する車中。
「美味かったっしょ!?」
「ああ」
「母さんもさ、細いのに食いっぷりがいいって気に入ってたし、また行こうよ」
「...なんで」
「なんでって...」
冷めた声に釣られ、運転する大悟を見た。
表情は固い。
「お前、俺が嫌いだったろ」
明らかに惇生は動揺し、狼狽えた。
「そ、そりゃ、最初は、で、でも今は...」
「今は?」
「...一緒にいて、楽しい」
照れ臭く、顔を伏せ、膝に置いた指を絡ませた。
「それは友達として?」
息が詰まる感じがした。
「わ、わからない...」
「わからない?」
「す、好き、なのかも...」
惇生なりに勇気を振り絞って、呟いた。
「...距離を置こう」
「距離を置くって、付き合ってもないのに」
思わず笑い、惇生は大悟を見たが、大悟に笑顔はなかった。
「...だったら、優しくすんなよ」
ついて出た惇生の声は冷ややかだった。
「悪い」
「...傷つくのが怖いんだろ」
大悟が、はっとした表情に変わる。
「相手が傷つくのが怖い、そして、傷つけてしまう自分が。大悟のせいじゃないのに。高二の時の相手だって...」
大悟は急ブレーキを掛けた。
「危なっ...!」
「どうして知ってる」
「なにが」
「高二がどうの、お前に話した事はない」
「...あの、おネエ言葉の人。あの人がペラペラ話したよ。自分が大悟について詳しい、て自慢みたいにね」
「...聖か、ったく」
「どうして、俺には何も話してくれない...?」
大悟は答えなかった。
「...家まで送る。案内しろ」
つい先程までの大悟とは打って変わった大悟を惇生は自宅に着くまでひたすら見つめた。
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