first love

ミヒロ

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「どっかで見た事あると思ってたらそういう訳か」

「表紙にもなった事あるんだよ、九条くん」

ファッション雑誌を読むことの無かった惇生はただただ、驚き、困惑気味の大悟の横顔を眺めた。

イケメンだとは思ってはいたけど...と。

「俺の事はいいから飯食おうぜ」

「そうは言ってもまだ飯来てねーよ」

うっ、と話しを逸らそうとした大悟が言葉に詰まる。

「デートならデートらしくしろよ、悠介」

「なんだよ、お前まで」

そうこうしているうちに料理が運ばれてきた。

「そうだ。惇生、左手」

「左?」

惇生が軽く左手を上げると、大悟はケースから取り出した腕時計を左手に巻いた。

「....これ、俺が投げた...」

惇生が投げ飛ばした腕時計だった。

「ヒビ、入ってたから、修理した」

「ラルフローレンの腕時計?なんだ、大悟のプレゼントだったのかよ」

「プレゼントって訳じゃない。時間がわからないと困るだろ」

「....カッコいい...」

美香の呟きに悠介がコホン、と咳払いをし、我に返った美香も慌てて、いただきます、と手を合わせた。

「要らないって言ったのに...恥ずかしい」

「恥ずかしい?指輪、プレゼントした訳じゃあるまいし」

帰りの車中、惇生は単に照れただけだ。
本当は嬉しかったのだが、素直になれない性分からウィンドウからの景色を見、嫌づらした。

「要らないなら、俺が見てないところで捨てろ」

「...本気で言ってんの?」

「ああ。必要ないなら好きにすればいい。俺の見えない、気づかないところでな」

明るいかと思えば明るくない、ふざけてるのか本気なのかわからない。

自分も掴み所がないとは言われるが、大悟もそうだと、ウィンドウに肘を置き、惇生は運転する大悟の横顔を見つめた。
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