first love

ミヒロ

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大悟がチゲ鍋をレンゲで掬い、口に運ぶまで、惇生は固唾を飲んで見守った。

「う、美味い...?」

「うん!美味いな」

ホッと胸を撫で下ろす。

以前、ファミレスは存在は知っている、という大悟を世間知らずだと呆れた。

当たり前のように自慢もせず、外車に乗り、惇生にくれた腕時計も高級ブランドだった。

優雅な食べ方といい、ファミレスのような安いレストランを知らなかったのだろう。
きっと、惇生にはわからない、入る事も難しい高級店で腹を満たして来たんじゃないか、と気づき、急に大悟の口に合うのか、心配になったのだ。

「食べないのか?惇生」

「え、ああ、食べるよ、美味そうだな」

ニコッと笑顔で大悟は答えた。

こっちも美味い、これも美味いよ、と2人でテーブルに並んだ料理に舌鼓を打った。

「大悟がさ、嫌いな食べもん、てなに」

ピザを持ち上げながら尋ねた。

「んー...フランス料理のフルコース」

思わず、惇生は吹き出した。

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫、なんでまた?」

「腹に溜まらないし、小難しい話しを挟む事が多いからかな」

そう言うと唐揚げを放り込んだ。

「....好きなのは鶏の唐揚げ?」

唐揚げを頬張ったまま惇生を見、目を丸くした。

ごく、と飲み込むと、

「よくわかったな」

思わず惇生は笑った。

「そりゃ、いつも唐揚げ、食ってんじゃん」

「え?ああ、確かに。学食で初めて唐揚げ食ってからさ、好物になった」

「学食か...」

「惇生はきつねうどんだよな」

「うん。変わってる、て言われるけどさ」

「好きなら、それでいいんじゃ?誰になに言われようがさ。てか、さっきの話しだけど...」

「ん?」

「....悠介が彼女出来た、て話し。ホントに平気なのか?」

「ああ、その話か。平気だよ、自分でも不思議だけど。あんなに好きだったのに」

遠い目の惇生を見つめた。

食べて失恋を忘れたいのだろう、大悟は勝手にそう解釈した。

「とことん食べようぜ。付き合う」

「まだ食べたりないの?お前」

惇生は何も知らず笑った。

「あれっ、惇生じゃん、何やってんだよ」

聞きなれた声に振り向くと、そこには悠介と付き合い始めた美香が並んでいて、美香が微笑み、小さく頭を下げた。
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