18 / 33
18
しおりを挟む大悟がチゲ鍋をレンゲで掬い、口に運ぶまで、惇生は固唾を飲んで見守った。
「う、美味い...?」
「うん!美味いな」
ホッと胸を撫で下ろす。
以前、ファミレスは存在は知っている、という大悟を世間知らずだと呆れた。
当たり前のように自慢もせず、外車に乗り、惇生にくれた腕時計も高級ブランドだった。
優雅な食べ方といい、ファミレスのような安いレストランを知らなかったのだろう。
きっと、惇生にはわからない、入る事も難しい高級店で腹を満たして来たんじゃないか、と気づき、急に大悟の口に合うのか、心配になったのだ。
「食べないのか?惇生」
「え、ああ、食べるよ、美味そうだな」
ニコッと笑顔で大悟は答えた。
こっちも美味い、これも美味いよ、と2人でテーブルに並んだ料理に舌鼓を打った。
「大悟がさ、嫌いな食べもん、てなに」
ピザを持ち上げながら尋ねた。
「んー...フランス料理のフルコース」
思わず、惇生は吹き出した。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫、なんでまた?」
「腹に溜まらないし、小難しい話しを挟む事が多いからかな」
そう言うと唐揚げを放り込んだ。
「....好きなのは鶏の唐揚げ?」
唐揚げを頬張ったまま惇生を見、目を丸くした。
ごく、と飲み込むと、
「よくわかったな」
思わず惇生は笑った。
「そりゃ、いつも唐揚げ、食ってんじゃん」
「え?ああ、確かに。学食で初めて唐揚げ食ってからさ、好物になった」
「学食か...」
「惇生はきつねうどんだよな」
「うん。変わってる、て言われるけどさ」
「好きなら、それでいいんじゃ?誰になに言われようがさ。てか、さっきの話しだけど...」
「ん?」
「....悠介が彼女出来た、て話し。ホントに平気なのか?」
「ああ、その話か。平気だよ、自分でも不思議だけど。あんなに好きだったのに」
遠い目の惇生を見つめた。
食べて失恋を忘れたいのだろう、大悟は勝手にそう解釈した。
「とことん食べようぜ。付き合う」
「まだ食べたりないの?お前」
惇生は何も知らず笑った。
「あれっ、惇生じゃん、何やってんだよ」
聞きなれた声に振り向くと、そこには悠介と付き合い始めた美香が並んでいて、美香が微笑み、小さく頭を下げた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる