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しおりを挟む聖のマンションはバーからタクシーで2m程、向かった先だった。
無駄な物のない、無機質な部屋。
フローリングのタグもソファやカーテンもアイボリー。柔らかい色調でもある1DK。
「適当に座って。コーヒー?ビール?」
「...コーヒーで」
キッチンに立つと珈琲の香りが部屋に充満する。その間、ソファに座り辺りを見渡した。
不意にベッドに見蕩れた。
「ポーションは?」
「いいです」
「そ」
素っ気なく聖は答えると惇生の向かいに座りカップに口付け、コーヒーを啜る。
「コーヒー飲みに来た訳じゃないわよね」
聖の物言いはいちいちカチン、と来る。
「どうして大悟が気になるのかわからないんだけど?」
思わず、口を噤んだ。
「まさか、大悟が好きで、なんて言わないわよね」
「そ、そういうわけじゃ、ただ」
「ただ?」
カップに顔を伏せたまま、聖が上目遣いに惇生を見る。惇生を敵視している事は惇生もわからない訳じゃ無かった。
「謝りたかったんです」
「...謝る?」
手のひらでマグカップを包んだ。
「酷い事、したな、て...」
「....酷い事」
長い沈黙が痛かった。
「バレちゃったのよ。大悟にのめり込み過ぎた子がいて。大悟の両親にね。もう留学は無いでしょうけど...いや、わからないわね」
「バレた....?留学...?」
「あんた、何にも知らないの?」
驚愕の眼差しに、惇生は言葉が詰まった。
「....私から話していいかわからないけど...大悟がまた日本を離れたりでもしたらだし....」
そうして、聖が説明してくれた。
大悟は資産家の御曹司。
ゲイである事を、高2で知られた。
交際がバレるや否や、大悟はアメリカに留学。
当時の彼氏は大悟の両親から大悟を唆した等、数々の言葉で傷つけられ、両親からは精神科に入れられ、離れ離れにされた。
それから、大悟は決して彼氏を作らず、互いの了承の元、気ままに遊べる恋人ともセフレとも付かない関係を続けてきた。
全ては過去のような過ち、元彼がボロボロになった過去の教訓からだ。
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