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しおりを挟む大悟が来ていた為、店長は無駄な気遣いで惇生を、
「今日はもういいぞ、惇生。客もはけてきたし」
「えっ、でも店長、俺、今日、遅れて来ましたし」
「遅れて来たっつっても講義が長引いたせいだろう、次は明後日か、よろしくな」
「はい、お疲れ様でした」
ぺこり、勢いよく惇生は頭を下げた。
「よっ、惇生、お疲れ」
私服に着替えた惇生は大悟の隣を素通りした。
「なんだよ」
「もう用はねーだろ。あ、これ返す」
左手首に嵌めた腕時計を返そうと指を掛けたが、大悟にスルーされた。
「要らねーよ、腕時計の1本や2本。それより」
「なんだよ」
「お前が痴漢や強姦に遭わないように送ってくよ」
「は?」
「いつもここからどう帰んの」
「どうって...歩いて」
「歩き?危なっかしいな、タクシーで帰れよ」
「しょっちゅう、タクシー使ってたら金の無駄だろ」
「自分の身の心配より金の心配かよ」
風に靡く茶色い髪の横顔は真剣だった。思わず、惇生は端正なその顔に食い入った。
おちゃらけてばかりの大悟の意外な一面だったからだ。
「次はバイトいつ」
「え?あ、明後日だけど」
肩越しに振り返ると大悟はふわりと笑った。
「これから俺がお前のボディーガードしてやるよ」
ぽかん、とした惇生はすぐさま。
「細っこい奴がよく言うよ、第一、俺は男なんで!」
「お前も充分、細っこいけどな」
そうして、惇生のバイト帰りは大悟が自宅前まで送る手筈になった。
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