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しおりを挟むようやく、講義を終えた教室で、参考書やプリントなどを手早にバッグに詰める惇生を見つけた。
「惇生、今帰り?」
惇生は大悟を無視だ。
「あのバーならまだ開いてねーぞ?」
通りすがる惇生の顔がこれでもか、と嫌づらになった。
「あんたと一緒にしないでくれる?急ぐから」
丸い目の大悟の隣をすり抜ける、その一瞬、柔軟剤なのか、柔らかい花のような香りがした。
踵を返し、惇生を追いかけた。
早足で惇生が向かった先は駅。
ホームに着くと、何度もスマホで時間を確認しているようだ。
電車がホームに着くと惇生に続いて、大悟も乗った。
吊り革に掴まり、忙しない様子の惇生の隣に立つとわかりやすく驚愕した。
「なんでお前がいるんだ」
「さあ、なんでだろね」
「ったく、時間ないってのに」
そう言い、再び、デニムの尻ポケットからスマホを取り出し、時間を確認している。
大悟は左手首に付けていた腕時計を外した。
「ほら」
なんの話しだ、と言わんばかりに変わらず、惇生は睨みあげる。
「スマホより腕時計のがわかりやすいだろ。何本もあるし、遠慮すんな」
惇生の左手首を取ると、大悟はお気に入りではあるがブランド物の腕時計を惇生の手首に巻いた。
「....要らねーよ」
「いいから取っとけ。クリスマスプレゼント」
「....秋だけど?」
「秋にもサンタはいるだろ」
その瞬間、惇生が笑った。声すら出さなかったけれど、子供のような邪気のない笑みを腕時計に向け、大悟は気遅れた。
「....バイトなんだ。ファミレスだけど。奢るよ。今回だけな」
「別にいいよ、自分で払う」
「せっかく、俺が払うって言ってんのに」
珍しく、惇生と会話できた気がした。
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