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しおりを挟む「これじゃ、ハルが休めないだろう?」
「い、いいんです、しばらくしたら、居なくなるから...きっと」
たまにコホコホ咳を交えながら、俺のトップスを掴む力は弱々しくなった。
勢いよく立ち上がり、ドンドンガンガン、けたたましい玄関へと向かう。
「せ、先輩」
背後からハルの不安そうな声。
思いきりドアを開けると170くらいの俺からしたら細身のチャラそうな相手を見下ろした。
「うるせーな、ドア壊したいのか?」
180の俺はドスを聞かせ、睨みつける。
「ハ、ハルの部屋じゃないんですか」
ネクタイのピンの色から同じ3年だと気づいたが、そいつは何故か敬語だ。
「部屋、間違えてんじゃねーか?で、ハルになんの用だ?」
「え?あ、知ってるでしょう?あいつ、させ子だって。寂しいから抱いて欲しい、て連絡があったんで」
ニヤニヤと気色悪い奴だな、と反吐が出そうになる。
ふと、ハルの部屋に入る前、ハルが1年の頃のクラスメイトから聞いたセリフを思い出した。
『ハルはノックじゃ出てきませんよ』
「ハルに呼ばれたのか?」
「ええ、もちろん」
嘘だな、と確信に変わる。
それに、風邪で寝込んでいた中、熱まであり、フラフラだったのに、男を呼びつけるとも思えない。
俺を招き入れたハルの後頭部も、ピン、とアンテナのような寝癖がしっかり付いていたくらいだ、ひたすら寝ていたに違いない。
「ハルに近づくな」
俺は思いきり、大嘘つきな猿を蔑んだ目で見下ろした。
「ハルなら熱まで出して風邪で寝込んでる、てのに抱かれたい訳が無いだろう」
明らかに男は動揺し始めた。
「お、俺が嘘をついてる、とでも?風邪を引いてるから、人肌恋しい、て連絡が来たんですよ」
「言い訳がましい奴だな。二度も言わせるな、ハルに二度と近づくな。なんだ?お前はどMか?俺にボコられたいの?」
片手で玄関の壁に手をついたまま、卑屈な笑みを浮かべる。
「お、お前、何様だよ」
「俺様。じゃーな」
そして、ドアを閉め、鍵をかけた。
まだ立ち尽くしてはいるかもしれないが、静かになり、ベッドから這い上がって様子を伺っていたらしい、ハルに歩み寄る。
「猿なら追い返したから、安心しろ」
ハルの頭を撫でてやると、ハルが涙を浮かべて俺を見上げる。
「....ありがとう、先輩」
「気にするな。せっかく寝てたのにな。二度寝出来そうか?」
ハルが小さく首を横に振った。
「目が冴えたなら、お粥でも食うか?温め直してくる」
「....はい」
俺はハルに笑顔で告げ、キッチンへ向かった。
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