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しおりを挟む朝練も気持ちが入らず、顧問に注意されまくった。
授業も耳に入って来ない。
俺の頭の中はハルの事で精一杯だった。
(....どうして、俺にカップケーキなんか持って来てくれるんだ?誰にでもそうして愛想を振り撒くのか....?)
考えてみたら、俺はハルの事をなにも知らない事に気づかされた。
ただ、噂のさせ子の天使、の異名の肩書きしか知らない。
「亮二。亮二!」
俺はふと我に返った。
「ずっと呼んでたんだぞ、なんだ?一日、ボーッとして」
「ボーッとしてる訳じゃねーよ」
頬杖をつき、口を尖らせた。
「なに?悩み?」
「悩み、つーか....て、なんで話さなきゃなんねんだよ!」
「一人で解決できないなら誰かを頼ってアドバイス受けるのもアリだと思うけど」
(....確かにそれはそうだ)
「わからないんだ」
「わからない?なにが」
「自分の気持ちも。相手の気持ちも。だけど、そいつ、めちゃくちゃ可愛くって。....なんでそんな事するんだ、て怒りもある」
「そんな事、て?」
「させ子なんて....」
そこまで言って、俺はヤバい、と口をつぐみ焦った。
「させ子、てなんだ、あの倉田かあ、なんだよ、結局、やったのかよ」
「....まあ。でも、なんとなく、慣れてるんだか、慣れてないんだかよくわからなかった」
「そうなの?」
「恥ずかしがるし、かと思えば、丁寧に愛撫してやると初めての快楽みたいによがってたり」
「....随分、細かい話しまで、ま、まあいいけど。でも、まあ、どうしてか、確かに疑問だよな。相当、好きもん、て雰囲気でもないし」
「見たことあるのか?」
「ああ、すれ違っただけだけど。クラスメイトと仲良く談笑しながら歩いてる姿からはちょっと想像出来ないかも。そこが売りなのかもしれないけど」
「そんな計算高いやつじゃねーよ、ハルは!」
思わず、声を荒げてしまい、ふーん、と鼻で笑われた。
「倉田のこと、よく知ってるかのようなセリフだな」
「そ、そうじゃないけど...礼儀正しいし、皿も洗ってくれたり...こないだはカップケーキ持って来てくれたり」
「カップケーキ!?」
「理由はわかんないけどな」
「食べて欲しかったからに決まってんだろ、お前はアホか」
そうか。単純に考えてみたら確かにそれだけだ。
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