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しおりを挟む翌日。
不躾な野次馬共に俺は取り囲まれている。
「で、どうだったよ、噂のさせ子ちゃん」
「させ子の天使、て言われてんだろ?やっぱり
良かった?」
どいつもこいつも...。
「やってねーよ」
嘘をついた。
周りからマジかよ、なんだよ、聞いて損した、とまあ身勝手な声。
流石に二回しました、なんて言えるわけがない。
しかも、ハルが予想以上に可愛く、男だということも忘れ、行為に燃えてしまったのだから。
ちりじりにクラスメイトが離れていく中、俺の頭にはハルの姿が蘇っていた。
(....また会いたいなあ)
は、と我に返り、またやりたい、の間違いじゃないか、と疑問を変えるが....
「....どっちもだ」
でも、ハルは噂のさせ子の天使の肩書きがある。
きっと、俺だけでなく、可愛くエロく悶えて喘ぎ、たまに慎ましく、品行方正な一面を男たちに見せているのだろう。
のぼせるだけ無駄だ。
そう思うのに、昼休み、俺の足はハルのクラス、2-Bに向かっていた。
「倉田ハルは居るか?」
入口付近の生徒に声を掛けると、俺のタッパを見上げ、慄いた様子で教室内にいるハルに声を掛けていた。
「ハル、お前、3年になんかしたのかよ」
「...3年?」
失礼だが、心配してくれるクラスメイトがいるんだな、と思った。
クラスメイトと談笑していたハルは、入口付近に立つ俺に気づくとパタパタと駆け寄ってきた。
「さ、佐伯先輩、ど、どうしたんですか?」
サラサラな栗色の髪、小さな卵形の色白な可愛い顔、見上げてくる大きな瞳は睫毛が長い。
小動物を目の前にしたかのような、思わず抱きしめたくなる衝動に駆られそうになるのを必死に抑えた。
「い、いや、元気かな、て思ってさ」
思わず作り笑い。
「げ、元気です。せ、先輩は...?」
「俺も元気」
そこまでなんとか会話が続いたが、見つめ合ったまま、沈黙が続き、気まづい空気が漂った。
「あ、その、様子、伺いに来ただけだから、ほら、お前、痩せてるし、ちゃんと食ってるか心配だから」
しばらく丸い目をして俺を見上げていたが、これまた可愛らしい笑顔になった。
「大丈夫です。これでもちゃんと食べてますから。太りにくい体質で」
「そうか、羨ましいな」
ようやく笑顔が見えたというのに、引き離すかのように無情にもチャイムが鳴り響く。
「えっと、じゃ、またな」
「は、はい」
そうしてほんの束の間だが、ハルの姿を見、それだけで俺はご機嫌だった。
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