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これは...浮気になりますか?
しおりを挟む「変わりました、遠藤です。昨夜はすみません、イキリうさぎさん...お電話頂いていたようですね」
「いえ!その...遠藤さん、凄く話しやすいし、お優しいし、アドバイスも的確で、きっと人気なのでしょうし...気にしてはないです、ただ....」
「ただ?」
胸元に置いた拳を握り締めてた。
「ただ、なんとなく...寂しかっただけで」
「....」
「あっ!すみません、突然、変な事を...!あ!さっき、僕、久しぶりに揚げ物を作ってみたんです」
「へえ、揚げ物ですか」
「はい、唐揚げを。亮、いえ、僕の彼氏、揚げ物が好きなのかな?唐揚げやコロッケとか...あ、だいぶ前も唐揚げ食べてたんです」
はは、と遠藤さんが軽く笑った。
「良く覚えてらっしゃるんですね。彼氏さんの食べていた物を」
「え、あ、はい...ストーカーみたいですかね」
自嘲の笑みを浮かべたが、
「いえ、素敵だと思いますよ。私も好きな人の食べていた物はつい意識してしまうのですが、料理が不得意なものですから」
「そうなんですか?遠藤さん、器用そう....」
「そんな事ないですよ、全然」
ああ、なんだか楽しいな、遠藤さんとの時間...。
「遠藤さんにも食べて貰いたいな、僕の料理」
勝手に口が動いていて、慌てて口を閉ざす。
遠藤さんも引いたのか無言だった。
「あっ、違うんです!深い意味はなくって...料理がお得意じゃない、とお伺いしたものだから...」
「優しいんですね、イキリうさぎさん」
僕は思いっきり照れて、熱くなった顔を電話越しに伏せた。
「...亮にも、ありがとうって言えていないのに」
「...そうなんですか?」
僕は頷いた。
「先日の映画館で、亮、僕のぶんのパンフ、買っていてくれたんです。僕がトイレに行っている間に...」
「そうなんですね」
「ちゃんと亮に...彼氏に伝えなきゃなのに、僕...いつも素直になれなくて」
「きっと、イキリうさぎさんの気持ちは伝わっていると思いますが...イキリうさぎさんから、ありがとう、と言われたら彼氏さんもさぞかし嬉しいでしょうね」
優しく笑みを含んだ遠藤さんのアドバイスに胸が張り裂けそう...。
「彼氏さんも、て事は...遠藤さんも、その、嬉しい、ですか...?もし、僕から、その...ありがとう、て言われたら....」
遠藤さんが優しく笑ってくれた。
「それはもちろん、嬉しいですよ。嬉しいに決まってます」
ごく、僕は一旦、喉を鳴らし、そして、
「い、いつもありがとうございます、遠藤さん....」
僕は顔を赤く染め、どもりながらも遠藤さんに感謝を述べていた。
一瞬の間の後、
「いえ、こちらこそです、イキリうさぎさん」
その遠藤さんの答えに嬉し泣きしそうになった。
どうしよう...僕、僕、遠藤さんの事....。
顔も知らない遠藤さんの事を....。
「遠藤さんがアドバイスしてくれましたよね...彼氏さんの手か腕を握ってみましょう、て...映画館の暗闇が怖かったら....」
「ええ」
ドクドクと心臓が鼓動を早めて苦しい。
「遠藤さんのお陰です...こうしてアドバイスやお話を聞いてくれるから...」
「私は単にアドバイスしているだけで、実行しているのは他ならぬ御自身、イキリうさぎさんですよ、もうイキリうさぎさんはいません」
「...どういう事、ですか...?」
こほ、と一度、咳払いした後、遠藤さんは続けた。
「イキリうさぎさんはもうイキッてなんかいない、いえ、最初から。ただの寂しかったうさぎさんでした。そうでしょう?」
遂には僕の涙腺が崩壊した。
亮の事、好きなのに、大好きなのに。
やっぱり、好きだ。遠藤さんの事が。
...この気持ちは浮気になるの?
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