素直になれない僕ですが

ミヒロ

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亮side

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「じゃ、またな」

電車で先に俺はバイト先近くで降りた。

聖也の姿が見えなくなるまでホームで手を振った。
聖也も小さく電車の中で手を振ってくれた。

相変わらず、笑顔なんかないけど、それはそれでいい。
中身は多分、俺との暫しのお別れで半泣きかもだし。

にしても。

前日、イキリうさぎの聖也と、遠藤として相談に乗っていた際に、

「僕、早めに待ち合わせに行こうと思うんです!」

の宣言に、呆気にとられた。

一時間前に行くか、それとも三時間前に行くか悩むと言うので、俺は慌てて、

「いや、一時間前でいいでしょう。昼だから陽射しはあるとはいえ秋ですし、風邪引きますよ」

「....そうでしょうか。早く会いたいのにな」

ボソッと聖也が独り言を呟き、可愛ええ...、と口にしてしまいそうになった。

聖也が来る前に待っておこう、と決めていた俺は一時間より少し前に待ち合わせ場所にいたんだ。

まあ、相変わらず天ノ弱な聖也はツン!だったけど、微かに耳を赤らめていたのを見逃さなかった。

「映画ですかー、芸術の秋ですね」

羨ましい、と続いて、食欲の秋でもありますね、と話しを変えた。

「ですね、最近、食欲増した気します。でも、天ぷらがなかなか食べれないんですよね、学食にもないし。大学近くのお蕎麦屋さんにあるかなあ」

そうして、さりげなく聖也が食べたい物もリサーチし、上映前、サンプルが並ぶフードコートで和食の店で足を止めたんだ。

並んで座り、呼ばれるのを待っていたら、聖也はバッグからハンドクリームを取り出し、塗り始めた。

「怖かったら彼氏さんの腕か手を握ってみましょう」

作戦を話した俺の言葉を意識してんのかな、と思わず可愛くなり、ハンドクリームを貸して貰うフリをして、聖也の手にハンドクリームを塗り、握った。

繋がれた手から目が離せなくなった様子で真顔なのに、顔ははっきり真っ赤にした聖也、可愛すぎたなー。

食事の最中もさりげなく、テーブルにハンドクリームを置いていた辺り、もしや、聖也は再度、俺から手を握られるのを期待してたのかな?

聖也のみぞ知る。
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