素直になれない僕ですが

ミヒロ

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亮の前に着いた僕は亮を見上げた。

「...一時間前なのに」

亮が僕を見つめ微笑んだ。眩しい笑顔...!

「早く聖也の顔を見てー!と思ったら早く着いちゃってさ」

う、嬉しい...!
僕と同じ気持ち!

「は?なにその歯が浮くセリフ」

フン、と鼻を鳴らし、内心の僕は、

僕の馬鹿!僕も同じだよって言えばいいじゃん!馬鹿馬鹿馬鹿ー!

...でも恥ずかしいんだもん、仕方ないじゃん。

色んな僕が大騒ぎしてる。

「じゃ、モールでなんか食べよっか、昼前だし」

「だね」

そうして、亮に次いで歩き出す。

「何が食いたい?聖也」

「えーっ、なんでもいいけど」

...和食。和食が食べたい。

ふと、フードエリアの一軒で亮が足を止めた。
亮の視線を追うと和食のサンプルが並んでる...!

「あー、なんか俺、和食食べたい気分かも。和食でいい?聖也」

「...うん」

ガラス越しのサンプル、天ぷらがある!

昨夜、遠藤さんに漏らしたんだけど。

亮も和食な気分だったなんて...。

生憎、並ばなくてはならず、名前と人数を書いて、並んで座った。

その間もウエストポーチからハンドクリームを取り出し、ぬりぬり。

「へー、ハンドクリーム?」

ギクッ。

「あー、最近、手荒れが気になっててさ」

「ま、秋だしなー。俺にも少し分けて?聖也」

え。

ハンドクリームを渡そうとしたら、多めに塗った僕の手を両手で握られた。

ギャー!
映画館前に握った、握られちゃった!

亮の手のひらに包まれた手を見つめる。
おっきな指の長い亮の手のひら。

....あったかい。

「あ、なに?いい香りすんな、これ」

「...金木犀」

「あー、金木犀か、これ。いい香りだな」

...いい香りだな、て言った!?
聞き間違えじゃないよね!?

真顔ながら、中身は大騒ぎ。

そうして、念願だった天ぷら定食が来るまで、テーブルにはハンドクリームを置き、塗った。

「そんなに手荒れしてんの?聖也」

「気になっちゃうタイプだから僕」

なんてすました顔しちゃうけど。

亮は唐揚げ定食だった。

...揚げ物、苦手だから頑張らなきゃ。
ふと思った自分に、また、内心、キャー!と大騒ぎしながら、亮とたまに会話を挟みながら静かに昼食を摂った。
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