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泣かせてください
しおりを挟むトゥルルル、トゥルルル
スマホを耳に当て、今にも嗚咽を漏らしそうな震える口元を抑える。
「はい。誰でもなんでも相談室でーす。初めてのお方ですかー?」
愛想のいい明るい女性の声に迎え入れられた。
SNSで知った、ボランティアの有志でやっているお悩み相談室。
「い、イキリうさぎ、です...っ」
涙ながらに名前を申した。
登録するに当たって名前や住所などを入力しなくてはいけなかった。
実名の隣の仮名の欄。
うさぎ、にしようとしたら、うさぎは既に使用中で、イキリうさぎにしたんだ。
だって、僕、イキッてるだけの非モテ男子だから...っ。
「い、イキリうさぎさんですねー!いつもお世話になってまーす!少々お待ちくださいませー!」
一瞬、狼狽えたような声色の後、溌剌と告げて、待っている間のヒーリングミュージックが傷ついた胸に染み渡る...!
「お待たせ致しました、遠藤です。今日は如何なさいましたか?」
優しい声色の男性、この遠藤さんが今の僕の担当だ。
最初は担当は女性だったのだけど、ゲイだからか、別の、確か、橋田さん、て男性に代わったんだ。
が、その男性は1度きりで偶然にも辞めてしまったらしく、担当がこの遠藤さんに代わった。
暫く、おいおいと泣いた。
「じ、実は...例の彼氏が浮気してるみたいで...っ」
言葉にならず、泣きじゃくる。
「ああ、そんなに泣かないでください、イキリうさぎさん。私は貴方の味方ですからね。それで、彼氏さんが浮気、ですか?」
「は、はい...」
泣く泣く電話越しに頷いた。
「彼氏さんの浮気現場に鉢合わせた、とかですか?それならば修羅場ですね...」
「いいえ...」
ぐすん、と鼻を啜る。
「す、すみません、ちょっと、鼻を噛みます」
「はい、是非そうされてください」
スマホをその場に置くと、ティッシュの箱を取りに行き、鼻を噛み、通話していたリビングのソファに戻った。
「現場に鉢合わせたとかじゃないです。そんな事があれば、僕はもうこの世にいません。ゆ、友人から聞きました...っ」
ああ、また涙が伝う...。
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