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しおりを挟むライブ会場に向かう列車の中では、ユウにダイチはさりげなく窓際を譲った。
が、ユウは車窓からの景色より、スコアやスケジュールの用紙に目を通す、ダイチの伏せられた真剣な眼差しの横顔を見つめた。
長めの金色の髪が似合う、白くも端正な横顔。
列車では2人同士、並んで席を取っていた為、前席にはコウとサトルが並び座っていて、時折、気ままに話しているようだ。
ユウの視線に気づき、ダイチが用紙の束から視線を上げ、ユウを見る。
「どした?」
「ううん。楽しみだな、て思って」
ふわ、とダイチも笑い、
「だな。初日だし、やっぱ緊張するけど」
「大丈夫だよ。...ダイチなら」
一瞬、ダイチは真っ直ぐにユウを見つめ、
「ありがと」
と口にした。
駅弁を頼み、食べた後は少し仮眠し、目的地に到着。
メンバー全員でキャリーケースを引きながらホテルに向かい、会場を軽く下見した後は郷土料理が味わえる居酒屋へ。
メンバーやマネージャーだけでなく、スタッフ全員で乾杯した。
「あ、美味い。これ」
地鶏の刺身を口にしたユウは思わず口元を抑え、目を見開いた。
「だな、新鮮。あー、酒飲みたいかも」
「酒?日本酒?大丈夫?ライブ前日に」
スタッフの1人に笑われ、
「ですね」
とダイチも苦笑した。
「打ち上げで思っきし飲みます」
次いでのダイチの張り切った声にスタッフやメンバー全員が爆笑した。
◆◆◆
「はあ、飲んだ、食べた」
メンバーそれぞれに部屋は宛てがわれているが、ダイチはホテルに戻るなりユウの部屋に居座り、ベッドに大の字に寝転んだ。
「ちょ、服着替えなよ」
笑いながらユウが窘める。
「んー...着替えさせて」
「子供か」
ぺし、とユウはダイチの額をデコピンし、いてっ、とダイチは声を上げた。
「寝るんなら部屋戻れば?ダイチ」
傍に座ってダイチを見下ろしたユウに、ゴロン、とダイチが体を翻す。
「大丈夫?緊張とかしてない?」
さっきまでのふさげたダイチではなく、優しいけれど真剣な眼差しに、ユウは惹き込まれそうになった。
(...心配して、部屋に来てくれた、のかな....)
「...少し、してるけど。大丈夫。ライブ始まったら」
「そっか」
ダイチは微笑むとベッドに置かれたユウの手首を持ち、引き寄せた。
ダイチに覆い被さる形になる。
そのまま、ぽんぽん、とまるで子供を諭すかのように背中を優しく叩かれ、ユウは瞼を閉じた。
この人で良かった...。
一度は辞めたBlack Angel。戻って来て良かった...。
心からユウは痛感した。
「...明日の為に体力、温存しとく?」
「え?」
にや、とダイチが狡猾に笑う。
「昨日、してなかったなあ、て」
途端、ユウは硬直し、理解を終えると、バカ!とダイチを叩き、ダイチも爆笑した。
「...ただ、さ」
「ん?」
「...ただ。一緒に眠りたい。ダメ?」
ダイチがきょとん、とした後、微笑む。
「ダメな訳ないだろ。その前にチャチャッとシャワー浴びて寝るか」
「うん」
ホテルのダブルベッドでダイチにくっつき眠りについた。
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