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先生と...喧嘩。
しおりを挟む「じゃあ、再会の乾杯しようか」
「あ、はい」
グラスに注いだビールで僕と沢村さんは乾杯した。
グラスの縁に口を付け、ビールを煽る沢村さんの喉元を見つめる。
そうこうしていたら、先生が部屋着で濡れた頭をタオルで拭いながら、リビングに戻った。
背後には同じく、風呂上がりであろう、部屋着の圭介がいる。
「ビールか、俺にもくれないか?祐希」
「え、あ、はい。ただいま」
すくっと僕は立ち上がり、キッチンに向かう。
「ああ、そうそう、なにか摘みはあったかな」
「あ、先生、摘みなら...」
冷蔵庫にタッパーがあります、と言う前に、先生はさり気なく、僕の隣に立った。
「どうしたんだ?圭介、ちっとも、焼きもちやきやしないぞ。風呂にまでついてくるし、ちゃんと沢村を誘惑してるのか?」
僕は初めて、カッチーンと来た。
先生は何もせず、全て、僕。
絵を描いてばかり。
...まあ、それが仕事なのはわかってはいるけど。
「...先生だって、若い子と一緒にお風呂入って鼻伸ばしてるじゃないんですか?お風呂で何処までやったんですか?あ、もしかして、最後まで?良かったですか?」
皮肉たっぷりに僕が微笑むと、先生に伝わったのか、先生も苛立っている様子。
「ビールはもういい!寝る!」
先生は自室へと引っ込んだ。
「どうしたの?喧嘩?」
「あ、いえ...」
圭介が先生の後を追うように先生の自室へ入っていくのを眺めた。
グラス片手に僕を見ている、沢村さんは気がついてない。
むしゃくしゃした僕はタッパーから作り置きしていた料理を盛り付け、摘み代わりに並べた。
きゅうりのピリ辛和え、もやしとササミのナムル、タコのぶつ切り、だし巻き玉子は数分で作った。
「...凄い。居酒屋みたいだね」
「そんな事ないです。ずっと自炊だったから...」
2人でビールを傾けていると、先生の部屋から妖しい声が聞こえ始めた。
圭介の喘ぎ声だ。
思わず、口を噤んだ。
「あいつ、声、デカいからなあ」
気にしていない様子で笑う沢村さんに僕は驚き、目を見開いた。
「ん?どうしたの?」
「え、あ、いや。気にならないのかなって...仮にも彼氏な訳ですし...」
少しの間の後。
「正直、もういいかなあ、て思ってるんだよ、あいつのこと」
僕は瞬きも忘れ、沢村さんを見つめた。
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