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10アリア視点、後ろにちょっぴり隣国にて

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**アリア

私の産まれた国リュヌレアムから、お兄様が突然いらっしゃった。理由をお聞きしたら、ジェミューという種族の人間を生け捕りにした、との情報を手に入れたのだと、教えてくださった。

「お兄様は、ジェミューに関心を持っていらしたの?」

「あぁ、ジェミューは繊細に魔力を操るんだ。その魔力で作り出される装飾品は素晴らしくてね、今、我が国ではどうしたらジェミューとの繋がりを持てるのか、模索しているところだよ。」

「まぁ! 本当に? ここではジェミューは狩りの対象だと耳にしたわ。きちんと対話ができるのね。」

「この国は野蛮だからとても考えられない事をする。そのせいで、ジェミューは他の種族を恐れているんだ。きっと捕まったジェミューも怯えている事だろう。」

「お兄様はどうなさるおつもりなの?」

「当然、手に入れるさ。ジェミューを妻に迎えて、仲のよい様子を見せれば、向こうの警戒心も薄れるはずだよ。」

にこりと微笑むお兄様に呆れてしまう。

「手に入れて結婚だなんて、お兄様もめちゃくちゃだわ。それに、野蛮だなんて、、、私はその野蛮な国で国王陛下に気に入られようと頑張っているのね。」

この国、アリドゥラムのウィレム陛下は30歳にして独身でいらっしゃる。縁談は沢山おありだったご様子だけれど、これまで1つもお受けにならなかった。そこでリュヌレアムの国王陛下は無理やりに娘を献上するという、強引な手段に出たのだ。娘とはつまり私で、私は王妃候補という立場に立たされた。
ところがお父様の思惑は外れて 私は王妃になれないまま、そして献上された身では帰る場所もなく、いつまでもここに暮らしている。
その上、気付けば私の他に2人 同じ境遇で王妃候補となったエレノアとハンナが、本館とは離れたこの建物で生活している。

それでも陛下はいつか必ずご結婚なさるはずで、一番有力なのは間違いなく私だ。

「あぁ、ごめんよアリア、そんなつもりで言ったのではないんだ。ないのだが、、ここでの扱いはそんなに酷いのか?」

お兄様は急に真面目なお顔になって、こちらに目をお向けになった。その懐かしい眼差しのせいでほんの少しだけ心が弱みを覗かせてしまう。

「酷い扱いは受けておりませんわ、でも、、、でも陛下のお姿を見る事は滅多に有りませんの。」

「はぁ、この国は一体何を考えているんだか。後で僕からも話をしてみるよ。僕だって結婚するんだから、少し焦ってもらおう。」

お兄様は、優しく私の頭を撫でて下さった。

お兄様が帰られてから、急に本館が騒がしくなり始めた。そして、エミリが慌ただしく部屋にやって来た。

「アリア様! 大変です! 素晴らしい事が起こりますよ! 」

「どうしたの? エミリ、あなたがそんなに慌てるなんて、、、」

エミリは私がリュヌレアムにいた頃からの使用人で、献上される時にただ1人、一緒に付いて来てくれた。

「今、陛下の指示でお部屋を整えているんです!」

「どういうこと? 陛下のお部屋は改装でもしているの?」

「違いますよ、あの部屋です、王妃のお部屋ですよ! 私も仲間に入れてもらって、ドレスも選んで来ました。アリア様にぴったりのドレスです。壁紙だって、アリア様の好きな、淡い紫ですっ、私、頑張って来たんですよ!」

突然の事で本当に驚いた。まさか、お兄様が話してくださったお陰なのかしら?

「エミリ、エミリ、夢みたいだわ。それは本当の事なの? 私はとうとう王妃になれるのね?」

「もちろんですよ、アリア様。あぁ、長かったですね、、、ここへ来て、もう3年が経ちました。」

16歳の時にここへ来てから、今では19歳になっていた。一番の有力候補だとは思いつつも、歳を重ねる事に恐怖を感じていたのも確かで、エミリの知らせを聞いて、踊り出したいくらい嬉しい。いつまでも2人で手を取り合って喜んだ。



***リュヌレアム国第一王子ディラン***

「父上、売れないとは、どういう事でしょうか?」

「どういう事も何も、そういうことだ。そもそも国王への献上品の為の、公認の狩りだったそうじゃないか。それをお前が横取りなどあってはならんことだ。ジェミューに入れ込み過ぎて回りが見えておらんのじゃないか?」

「そんなことあり得ませんっっ! もしそれが本当なら、対話した時に仰ったはずです!」

「お前の言い分はいい。向こうにはアリアもいるんだぞ。楯突いて立場が悪くなったらどうする。もっと気を付けてやれ。」

「くっ、」

「分かったな。 もう行け。」

どういうつもりだ。あの時ウィレム陛下は初めて知った様子だった。それに、特に興味を示していた訳じゃない。確かに珍しくはあるが、、、まさか僕の話を聞いて、嫌がらせをしたのか?
アリアには申し訳ないが、王妃候補として無理やり置いて来た事を陛下は不服に思っている。だがそれは仕方の無いことで、お互いの国にとっては素晴らしく有益な事なのだ。もしこれを根に持っているとしたら、、、いや、さすがに幼稚過ぎるだろう、、だが、、、

靦然たるウィレム陛下の顔がよぎっていった。

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