傲慢上司の躾け方

浅草A太朗

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閑話1

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あの日は珍しく自分でも飲み過ぎた自覚がある。
正直な話、途中から俺には記憶がない。
昇進が決まった事、これは会社でも最年少だと言われ周りからも担がれやたら気持ちが大きくなっていた覚えはある。
社長の娘とも婚約が本決まりになったのだ。
これは社長の意向によりまだ公表されてはいないが、昇進の辞令と共に直々に伝えられた事もあり
人生最良の日だと舞い上がっていた。

起きた時には見知らぬ天井であり、知らぬベッドで
シャツを緩めた姿のまま寝ていた。
あまり酒で失態を犯す方ではない為、記憶もなく見知らぬベッドに寝ていた事にまず慄いた。

もしや何かやらかしたのではないかと、婚約が決まったというのに女性を連れ込みでもしたのではと
血の気がひいたのを覚えている。

思わず飛び起き横を見ようとして体の倦怠感と異様なまでの腰痛、そして人様に言うには憚られる場所の疼きに固まった。

幸いにしてスーツの上を脱ぎネクタイを外しているだけであり、隣に女性はいなかった。
だが…パンツの中の滑りに気付きそっと覗いてみれば…

こ、この年にして夢精か。
いやだがここ暫く忙しくて彼女とも会えておらず、そういった事に及んでもいない。
致し方ない、と何故か痛む体を引きずりどうやらどこかのホテルであろうこの場所でシャワーを浴びようと考えた。

ベッドから降り立ってようやくベッドの向かいにあるソファからでかい図体のせいで足が飛び出し、窮屈そうに眠っている部下の姿に気がついた。
佐々木だ。

そういえば帰りの方向が一緒だとか話していた…ような…
いかん、飲み過ぎたか頭も痛い。
健やかに眠る部下を一瞥する。

眠っている佐々木のそばに近寄りマジマジと様子を見る。
こいつは俺が一番重宝してるヤツだ。
本人に言った事はないが、仕事をそつなくこなし、多少の無理難題も何とかする使えるやつ。
体力もあるから資料運びにも使える。

かつ、こいつは気づいていないようだがそれなりに見栄えがいい。
開発部とはいえ時に外部に顔を出す事もある。
その際に連れて行くなら、やはり相手に好印象な人間を連れて行くに限る。

俺から見ればむさ苦しい類ではあるがまあ男らしく整っている方だろう。黒髪の短髪で運動部あがりだといってたか。
体育会系なノリの相手に気に入られやすい。
女性陣にも密かに人気があるが、こいつが抜けると俺の仕事に支障が出る。
自分で言うのもなんだが俺の方がモテるからな、牽制に近づけば仕事に来ているのか結婚相手を探しているのかわからないバカ女への牽制にもなる。

全く、ここまで気を遣ってやってるやつはそういないぞ?俺にしては珍しく可愛がっている方だ。
寝ている佐々木の前髪にそろっと指先を遊ばせる。
短く硬い髪がちくちくと指先に触れて心地よい。
野球部のやつの坊主頭を触らせてもらった時を思い出す…
っと、思考がぶれてるな。
やはり二日酔いのせいか。まあこいつが起きる前に諸々済ませてしまおう。

気がつけばソファの前にしゃがみこんでいた。
頭痛と腰痛のせいだな、何があったかは後でこいつに聞くか。
さてシャワーを浴びるかとゆっくりと立ち上がる。
寝ている佐々木の顔を見ていただけなのに、やはり何かおかしい。
腹の奥がきゅうと熱い。空きっ腹に酒を入れたからだろうかと腹をなでれば、ずくりと熱が増した気がする。
思わずさらに下に伸びかけた手を引っ込めて俺はシャワーを浴びにいった。


その様子を実は見られていた事など露とも知らず。

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