傲慢上司の躾け方

浅草A太朗

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プロローグ

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俺の実家は表向きは普通の食堂を営んでいる。
だが、そこに裏の顔がある。
それは俺の中にもあるとある力が原因だ。
だがその家業を継ぐ気にはなれず、俺は早々に就職した。

そこで出会ったのが自分よりたった三つ上の超人。
常日頃自分に強く当たってくる上司、中原宗一郎。

ムカつく事にその辣腕を振るい期待の出世頭であり、現在既に主任であり次の昇進も間近という。
社内で女性社員が王子様と裏で呼ぶ程の美貌持ち。

地毛なのだという栗色の髪は常にきちんと整えられており、清潔感も抜群だ。
神様が愛情を込めて人形を作ったならこうなるだろうというような、どこから見ても問題のない美しさ。

ハーフらしくそれも納得の通った鼻筋に少し厚めの唇。くっきりとした二重に長いまつ毛。
瞳は淡い茶色に緑の潜む艶やかな色。
海外のモデルや俳優だと言われても違和感はない。
帰国子女でもあり語学も堪能。
トリリンガルどころではないという。
まあ何ヶ国語使えるのか俺の知った事ではないが。

挙げ句の果てには社長からの覚えもめでたく、社長の娘さんと婚約を前提にお付き合いしているのだとか。(部署の派遣のおばちゃん情報)
そのお嬢さんは俺でも雑誌で見たことのあるモデルである。

なんという勝ち組か。
神は奴に何個与えれば気が済むのか。
それとも前世で徳の高い高僧だったりしたんだろうか?
そうでも思わないとやっていられない。

仕事の鬼であり、その実力に裏打ちされた自信により言葉は既に危険物。
何度俺の心を踏み躙り、プライドをへし折られた事か。

今日も理不尽なまでの叱責と書類を食らった
佐々木侑李は心の中で止めどなく悪態をつき続ける。
やたらと中原は佐々木に対してだけは当たりが強いのだ。

心中で何度罵倒の言葉を吐いたかわからない。
だがそれを口にすることはない。何故なら
特別とも言える妙な能力以外、俺が他より勝るのは身長のみ。いや学生時代に鍛え上げた肉体もか。
まあこの開発事業部では何の役にも立ちはしないが。
そんな平凡な極まりない男だからだ。

それでも何とか食らい付いてきた。
だが無理矢理参加する事になった中原の昇進祝いの部署の飲み会にて言い放たれた一言に
堪忍袋の緒が切れた。

そんなことで?
きっとそう思われるんだろう。
だけど、俺の鬱屈とし屈折した心は限界だった。

二次会を終え女性陣に飲まされ続けた中原は
にこやかに解散の合図とともに見送っていたが
見送り終えるとぐらりとこちらに倒れ込んできた。

時刻も遅くタクシー組で方向が同じという不運である。
「悪いな」
「いえ。」

短い会話で何とか体勢を整えた中原は
タクシーの待ち時間の潰しがてらか軽口を叩いてきた。
そういえばお前の下の名前って何だっけと。

「侑李です。にんべんに有とかいてすももとかの李です。」

「ゆうりぃ~?190cm近くあるそのでっかい図体で~?似合わねぇなぁ!」

笑い出す中原を見てぶちっと何かが切れた気がした。

「よく言われますよ。名前だけ聞くと可愛らしいって。」
「だろうなぁ?ゆうり、ゆーぅりぃ~」

何が面白いのか人の名前を口にしては笑い続ける中原に、佐々木は目だけは冷え切ったまま口には笑みをのせる。

佐々木も相当酔っていたのだろう。
普段の会社であったなら腹に据えかねていたとしても笑い飛ばしたろうから。

もうこいつには一度痛い目にあわせてやるか。
そううっそりと笑みを浮かべるのであった。
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