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事件簿1
昼下がりの電車内①
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静かであった電車内。
空いた座席には鞄を抱きしめるように眠る会社員の姿やOLの姿。
子供連れの母親など、穏やかな空気が流れていた。
心地よく揺れる車内に響くのは眠気を誘う走行音。
カタタン、カタタン。
やがて車内に車掌が次の停車駅を告げる声が響く。
『次は~原升~原升です。ドア左開きます。』
やがて到着と合わせて鳴る電子音とプシュっという音と共に開く扉。
降車する者はおらず、乗り込んできたのは
やや苛立った空気を纏う神経質そうなスーツの男性と、必要以上に猫背の男子高校生。
そして誰もが苛立ちの原因だろうと認識できる姦しいセーラー服の女子高校生達のキンキンとしたはしゃぐ声。
女3人寄れば姦しい。
その言葉通りとばかりに乗車したにも関わらず
彼女達は声量を抑えるわけでもなく、ベラベラと喋り続ける。
1人は空いていた端の座席に行儀悪く大股を開いて座り、投げるように学校カバンを隣に放り
1人はドアとその座席近くに寄りかかるようにしてスマホをいじり
もう1人はその近くにしゃがみこんだ。
そうして間もなくドアは再び電子音と車掌の声と共に閉まり、発車する。
彼女達のマナー違反の声とはしたなさに、先客達は顔を顰めざるを得ない。
座席に座った女の鞄に押しやられるように
先に座ったスーツの男は苛立ち混じりに舌打ちしながら少し離れて座り直す。
同じ駅から乗り込んできた男子高校生は
彼女達と顔見知りだったのか邪魔なんだよとか
相変わらずキモいよねーなどの罵倒と共に
軽い蹴りを見舞われよろめきながら反対側のドアにすがる様に立っていた。
「にしてもさー悠亜マジで彼氏と別れたん?
今度Wデート声かけようと思ってたのにー。」
「マジーつかあいつつまんねーし?ろくなデートとしないしさーいいとこなくない?」
「あーね、毎回割り勘やろうだっけ?」
「みみっちーよねえ、ファミレスくらい奢れっつの。」
「つかまず悠亜をファミレスにーってのがありえんくない?」
それな!と言いながら手を叩き笑いあう彼女達。
悠亜と呼ばれた座席に座っていた女は見た目だけは清楚と言っても差し支えないだろう。
さらりと胸元までおろされ艶のある黒髪。
薄化粧に見えるその顔は意思の強そうな大きな黒い瞳に、それを縁取る長く豊富なまつ毛。
唇もぷっくりとしたハートリップ。
容貌も整っているし、何よりスタイルも良い。
それもそうだろう、彼女は雑誌モデルもしていてそれなりに有名なのだから。
彼女に同調する2人はどうしても比べると見劣りはするし、濃い化粧ではあるが
その化粧のおかげなのだろう。まあ見れる顔ではある。
しゃがみこんでいる女はほぼ金に近く染めた髪はぱさつき、寄りかかっている女は茶色く染めた髪を緩く巻いてスマホを見ながら自分のアイメイクを確認している。
「でも顔も良かったし生徒会長っしょ?切るのはやくね?」
寄りかかっている女が悠亜を見下ろしながら問い掛ければ、悠亜は心底嫌そうな顔をして答える。
「いやーマジ無理。顔が良くてもあんなテクなし短小包茎の早漏は無理」
ため息と共に告げられた言葉に2人の女はゲラゲラと嗤い声をあげる。
「マジ?生徒会長様、あんな顔して粗チンなの?ウケる。」
「財布もちんこも粗末とかかーわいそー」
そっと子連れの母親は子供の手を引き隣の車両へと移動したのを皮切りに、近くにいた人たちは関わりたくないとばかりに距離を置いたり
起きていた人も寝たふりを決め込み関わらない事を示す。
「ま、佐藤よりはマシだけど?」
ニヤリと唇を歪めて悠亜の視線が示す先には
鞄を抱きしめるようにして息を潜めていた男子高校生がいた。
対面のドアにいた彼は6つの揶揄を秘めた瞳に晒され哀れにも顔を真っ青にしている。
彼の容貌はパッと見冴えない気の弱そうな男子である。その見た目のままなのだろうか。
言い返す事もせずキュッと口を噤み更に身を縮こませる。
「あー美希から聞いたけど、あいつ悠亜に告ってきたんだっけ?」
美希と呼ばれた茶髪の女子は手持ち無沙汰に巻いた髪の先を指で遊びながら
「悠亜ごめーん、あまりにあり得な過ぎて亜弥にも話しちゃったわー。」
悪びれた様子もなくそう告げる。
「別にいいよー、ま、恥かくのは悠亜じゃないしー?ねー佐藤くん。」
にこっと美しい笑みを浮かべ話を振られた男は
おろおろとした後に小さな声ですみませんと呟くように言う。
「佐藤ーきこえねーよ、声きこえてもきもいだけだけどー」
「粗チン野郎が振られたからって自分に悠亜が振り向くかもとか勘違いすんじゃねーぞ。」
美希、亜弥と呼ばれた2人がそれぞれ低い声で告げた後身の程知らず過ぎっしょとまたけたたましく嗤う。
「ケチ粗チンでも生徒会長のあいつよりマシなとこ1つもないもんねー」
「つか生徒会長より粗チンあるっしょ」
「やめてよー想像もしたくなーい、きもすぎ」
ギャハハと品のない声が響き渡る車内。
悠亜と同じ座席に座っていたスーツの男性が立ち上がりかけ
「君達いい加減にしないか!こんな車内で恥ずかしくないのか!
君も1つは言い返したらどうだね!男として情けないしみっともないったら…!全く最近の若い奴は…」
そういって男性が立ち上がり…
空いた座席には鞄を抱きしめるように眠る会社員の姿やOLの姿。
子供連れの母親など、穏やかな空気が流れていた。
心地よく揺れる車内に響くのは眠気を誘う走行音。
カタタン、カタタン。
やがて車内に車掌が次の停車駅を告げる声が響く。
『次は~原升~原升です。ドア左開きます。』
やがて到着と合わせて鳴る電子音とプシュっという音と共に開く扉。
降車する者はおらず、乗り込んできたのは
やや苛立った空気を纏う神経質そうなスーツの男性と、必要以上に猫背の男子高校生。
そして誰もが苛立ちの原因だろうと認識できる姦しいセーラー服の女子高校生達のキンキンとしたはしゃぐ声。
女3人寄れば姦しい。
その言葉通りとばかりに乗車したにも関わらず
彼女達は声量を抑えるわけでもなく、ベラベラと喋り続ける。
1人は空いていた端の座席に行儀悪く大股を開いて座り、投げるように学校カバンを隣に放り
1人はドアとその座席近くに寄りかかるようにしてスマホをいじり
もう1人はその近くにしゃがみこんだ。
そうして間もなくドアは再び電子音と車掌の声と共に閉まり、発車する。
彼女達のマナー違反の声とはしたなさに、先客達は顔を顰めざるを得ない。
座席に座った女の鞄に押しやられるように
先に座ったスーツの男は苛立ち混じりに舌打ちしながら少し離れて座り直す。
同じ駅から乗り込んできた男子高校生は
彼女達と顔見知りだったのか邪魔なんだよとか
相変わらずキモいよねーなどの罵倒と共に
軽い蹴りを見舞われよろめきながら反対側のドアにすがる様に立っていた。
「にしてもさー悠亜マジで彼氏と別れたん?
今度Wデート声かけようと思ってたのにー。」
「マジーつかあいつつまんねーし?ろくなデートとしないしさーいいとこなくない?」
「あーね、毎回割り勘やろうだっけ?」
「みみっちーよねえ、ファミレスくらい奢れっつの。」
「つかまず悠亜をファミレスにーってのがありえんくない?」
それな!と言いながら手を叩き笑いあう彼女達。
悠亜と呼ばれた座席に座っていた女は見た目だけは清楚と言っても差し支えないだろう。
さらりと胸元までおろされ艶のある黒髪。
薄化粧に見えるその顔は意思の強そうな大きな黒い瞳に、それを縁取る長く豊富なまつ毛。
唇もぷっくりとしたハートリップ。
容貌も整っているし、何よりスタイルも良い。
それもそうだろう、彼女は雑誌モデルもしていてそれなりに有名なのだから。
彼女に同調する2人はどうしても比べると見劣りはするし、濃い化粧ではあるが
その化粧のおかげなのだろう。まあ見れる顔ではある。
しゃがみこんでいる女はほぼ金に近く染めた髪はぱさつき、寄りかかっている女は茶色く染めた髪を緩く巻いてスマホを見ながら自分のアイメイクを確認している。
「でも顔も良かったし生徒会長っしょ?切るのはやくね?」
寄りかかっている女が悠亜を見下ろしながら問い掛ければ、悠亜は心底嫌そうな顔をして答える。
「いやーマジ無理。顔が良くてもあんなテクなし短小包茎の早漏は無理」
ため息と共に告げられた言葉に2人の女はゲラゲラと嗤い声をあげる。
「マジ?生徒会長様、あんな顔して粗チンなの?ウケる。」
「財布もちんこも粗末とかかーわいそー」
そっと子連れの母親は子供の手を引き隣の車両へと移動したのを皮切りに、近くにいた人たちは関わりたくないとばかりに距離を置いたり
起きていた人も寝たふりを決め込み関わらない事を示す。
「ま、佐藤よりはマシだけど?」
ニヤリと唇を歪めて悠亜の視線が示す先には
鞄を抱きしめるようにして息を潜めていた男子高校生がいた。
対面のドアにいた彼は6つの揶揄を秘めた瞳に晒され哀れにも顔を真っ青にしている。
彼の容貌はパッと見冴えない気の弱そうな男子である。その見た目のままなのだろうか。
言い返す事もせずキュッと口を噤み更に身を縮こませる。
「あー美希から聞いたけど、あいつ悠亜に告ってきたんだっけ?」
美希と呼ばれた茶髪の女子は手持ち無沙汰に巻いた髪の先を指で遊びながら
「悠亜ごめーん、あまりにあり得な過ぎて亜弥にも話しちゃったわー。」
悪びれた様子もなくそう告げる。
「別にいいよー、ま、恥かくのは悠亜じゃないしー?ねー佐藤くん。」
にこっと美しい笑みを浮かべ話を振られた男は
おろおろとした後に小さな声ですみませんと呟くように言う。
「佐藤ーきこえねーよ、声きこえてもきもいだけだけどー」
「粗チン野郎が振られたからって自分に悠亜が振り向くかもとか勘違いすんじゃねーぞ。」
美希、亜弥と呼ばれた2人がそれぞれ低い声で告げた後身の程知らず過ぎっしょとまたけたたましく嗤う。
「ケチ粗チンでも生徒会長のあいつよりマシなとこ1つもないもんねー」
「つか生徒会長より粗チンあるっしょ」
「やめてよー想像もしたくなーい、きもすぎ」
ギャハハと品のない声が響き渡る車内。
悠亜と同じ座席に座っていたスーツの男性が立ち上がりかけ
「君達いい加減にしないか!こんな車内で恥ずかしくないのか!
君も1つは言い返したらどうだね!男として情けないしみっともないったら…!全く最近の若い奴は…」
そういって男性が立ち上がり…
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