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見習い魔術師くんと見習い騎士くん
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かび臭く苔むした岩壁に、薄汚れたタイルの床。
広さは2畳程しかなく、灯りは遥か頭上の天窓と
狭い室内をうっすら照らす程度の魔導ランプのみ。
どことなく饐えた臭いの漂う異質な部屋。
最初は割れるような頭の痛みに目を覚ましたが、
今はずっと無理な体勢を強いられている痛みに呻いている。
本当ならば大声を出して助けを呼びたい。
時折天窓に叩きつける風や水の音以外しない空間で
最初に目に入った目の前の扉に
人が来るだろうと待った。
だが一向にその気配すらない。
そして何より俺の口には何かが嵌め込まれた口輪を通されており、声を出すに出せないのだ。
喚こうとすれば口腔内に嵌め込まれた物に喉が圧迫されえづくだけで苦しさだけが残る。
両手は親指同士がくっつけられているようで
手首も頭の後ろでまとめられており、肘も何かの布で首裏を通しているのか開きっぱなしで動かせない。
下半身は足首に革製の枷が嵌まっており、間に棒が挟まれており肩幅よりもやや開いた状態から閉じることも出来ない。
そしてその体を天井から伸びた鎖が吊っている為に
体の力を抜くことすら許されない。
一度気を再度失いかけたが、膝がつかない程度に調整されており
手首から背中に走る激痛に何とか体を正した。
今の俺は一糸纏わぬ姿であり、記憶をなくす前まで着ていた筈の隊服は勿論、下履きすら奪われており
足の裏には苔のせいだろうか濡れてぬたぬたとする感覚が気持ち悪い。
もうどれ程の時間がたったのかわからない。
腹は空いているし、正直便所にも行きたいが
そこまで切羽詰まっていないだけマシなのかもしれない。
昨晩は同じ騎士見習いの連中と4人で娼館に行ったところまでは覚えている。
だが、いざ事に及ぼうとした辺りから記憶が曖昧である。
目覚めについて来た頭痛が落ち着いて来てからようやく今この現状を把握し
只管に人の気配を待つだけに至ったのだ。
混乱して最初はあれやこれやしていたが、先ほどのように痛い目を見るだけとわかってからは
目を瞑り只管に気配に気を配る事に徹していた。
これでも王都騎士団の見習いである。
気配などの察知は初期の初期に訓練された。
情報がない状態で無闇に動くのは危険であるという部隊長の教えがこんな時に生きるとは。
「おや?もう起きてたんですか?
配合の分量間違えたのかな?」
そう、それだけ気配に集中していたのに
その声は突然目の前から聞こえて来た。
驚きに声を上げればそこにはずるりと長いローブをかぶり
自分よりも小柄な体躯の人間が立っていた。
声からして男だろう。
部屋の薄暗さとローブによってその容貌までは窺い知れない。
咄嗟のことに身を竦めれば、拘束されていた身体に痛みが走り唸るように呻く。
「ルキウス・アナライク。貴方の対立違反の処罰者は僕になりました。
まあお互い見習い同士仲良くやりましょ。
僕だってこんなのめんどくさいだけなんですよねー。
あ、あなたと一緒だったご友人達2名も同じようにそれぞれ罰則の為に人がついてますから。
あとここは騎士団で禁を犯した物用の場所であり
誘拐されたとかではないので、ご安心を。」
とりあえずこの男の言うことが本当なのであれば
見ず知らずの場所でもなく、勿論騎士団の人間も理解しているということだろう。
だが俺が何の罰に触れた?
いやあと2人と言ったが俺達は4人行動だ。
残り1人はどうなったというのだ…?
まるでこちらの考えを見透かしたかのように
気怠げな男の声が答えを出してくる。
「まず、あなた方は警邏中に娼館に行きましたね。
いやー流石に最近大きな戦がないとはいえ職務放棄。
挙句警邏中に女性に手を出したそうですね?
近く野盗の討伐作戦が組まれてるの、ご存知ですよね?
というのに貧困街で警邏の放棄どころか貧民だと少女をおもちゃにしただとか?
全く呆れますよ。ああいった場所には情報も落ちやすいというのに。
ああそれとあなた方の中のお1人はあなた方が娼館で其々の女を買った辺りで報告に来てくれましてね?
その為、今回は目溢しをもらったんですよ。」
…誰か裏切りやがった?
「はーい、その目は逆恨みですかね?
アナライク侯爵家が三男のルキウス様?
だからお貴族のボンボンって嫌なんですよねー。
選民意識丸出しで、その癖あなたはスペアにもなりゃしない三男坊だってのに。
よくいるんですよー、俺は騎士なんだからなって。
まだ見習いなのにねえ?
ま、そんなわけで所定の罰を与えます。
…が、僕こういうの本当に嫌なんですよねぇ。
研究に勤しんでたいのに…。
まぁ、見習いが通る道だから仕方ないですかね。
僕の出世の為に使わせてもらいますよ。」
広さは2畳程しかなく、灯りは遥か頭上の天窓と
狭い室内をうっすら照らす程度の魔導ランプのみ。
どことなく饐えた臭いの漂う異質な部屋。
最初は割れるような頭の痛みに目を覚ましたが、
今はずっと無理な体勢を強いられている痛みに呻いている。
本当ならば大声を出して助けを呼びたい。
時折天窓に叩きつける風や水の音以外しない空間で
最初に目に入った目の前の扉に
人が来るだろうと待った。
だが一向にその気配すらない。
そして何より俺の口には何かが嵌め込まれた口輪を通されており、声を出すに出せないのだ。
喚こうとすれば口腔内に嵌め込まれた物に喉が圧迫されえづくだけで苦しさだけが残る。
両手は親指同士がくっつけられているようで
手首も頭の後ろでまとめられており、肘も何かの布で首裏を通しているのか開きっぱなしで動かせない。
下半身は足首に革製の枷が嵌まっており、間に棒が挟まれており肩幅よりもやや開いた状態から閉じることも出来ない。
そしてその体を天井から伸びた鎖が吊っている為に
体の力を抜くことすら許されない。
一度気を再度失いかけたが、膝がつかない程度に調整されており
手首から背中に走る激痛に何とか体を正した。
今の俺は一糸纏わぬ姿であり、記憶をなくす前まで着ていた筈の隊服は勿論、下履きすら奪われており
足の裏には苔のせいだろうか濡れてぬたぬたとする感覚が気持ち悪い。
もうどれ程の時間がたったのかわからない。
腹は空いているし、正直便所にも行きたいが
そこまで切羽詰まっていないだけマシなのかもしれない。
昨晩は同じ騎士見習いの連中と4人で娼館に行ったところまでは覚えている。
だが、いざ事に及ぼうとした辺りから記憶が曖昧である。
目覚めについて来た頭痛が落ち着いて来てからようやく今この現状を把握し
只管に人の気配を待つだけに至ったのだ。
混乱して最初はあれやこれやしていたが、先ほどのように痛い目を見るだけとわかってからは
目を瞑り只管に気配に気を配る事に徹していた。
これでも王都騎士団の見習いである。
気配などの察知は初期の初期に訓練された。
情報がない状態で無闇に動くのは危険であるという部隊長の教えがこんな時に生きるとは。
「おや?もう起きてたんですか?
配合の分量間違えたのかな?」
そう、それだけ気配に集中していたのに
その声は突然目の前から聞こえて来た。
驚きに声を上げればそこにはずるりと長いローブをかぶり
自分よりも小柄な体躯の人間が立っていた。
声からして男だろう。
部屋の薄暗さとローブによってその容貌までは窺い知れない。
咄嗟のことに身を竦めれば、拘束されていた身体に痛みが走り唸るように呻く。
「ルキウス・アナライク。貴方の対立違反の処罰者は僕になりました。
まあお互い見習い同士仲良くやりましょ。
僕だってこんなのめんどくさいだけなんですよねー。
あ、あなたと一緒だったご友人達2名も同じようにそれぞれ罰則の為に人がついてますから。
あとここは騎士団で禁を犯した物用の場所であり
誘拐されたとかではないので、ご安心を。」
とりあえずこの男の言うことが本当なのであれば
見ず知らずの場所でもなく、勿論騎士団の人間も理解しているということだろう。
だが俺が何の罰に触れた?
いやあと2人と言ったが俺達は4人行動だ。
残り1人はどうなったというのだ…?
まるでこちらの考えを見透かしたかのように
気怠げな男の声が答えを出してくる。
「まず、あなた方は警邏中に娼館に行きましたね。
いやー流石に最近大きな戦がないとはいえ職務放棄。
挙句警邏中に女性に手を出したそうですね?
近く野盗の討伐作戦が組まれてるの、ご存知ですよね?
というのに貧困街で警邏の放棄どころか貧民だと少女をおもちゃにしただとか?
全く呆れますよ。ああいった場所には情報も落ちやすいというのに。
ああそれとあなた方の中のお1人はあなた方が娼館で其々の女を買った辺りで報告に来てくれましてね?
その為、今回は目溢しをもらったんですよ。」
…誰か裏切りやがった?
「はーい、その目は逆恨みですかね?
アナライク侯爵家が三男のルキウス様?
だからお貴族のボンボンって嫌なんですよねー。
選民意識丸出しで、その癖あなたはスペアにもなりゃしない三男坊だってのに。
よくいるんですよー、俺は騎士なんだからなって。
まだ見習いなのにねえ?
ま、そんなわけで所定の罰を与えます。
…が、僕こういうの本当に嫌なんですよねぇ。
研究に勤しんでたいのに…。
まぁ、見習いが通る道だから仕方ないですかね。
僕の出世の為に使わせてもらいますよ。」
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