眠神/ネムガミ 〜 特殊能力の発動要件は「眠ること」。ひたすら睡眠薬をあおって敵を撃破し、大好きな女の子たちを護り抜け!

翔龍LOVER

文字の大きさ
上 下
63 / 88

助っ人再び

しおりを挟む
 敵の本拠地へ乗り込む前に、俺には一つ考えておかなければならないことがあった。

 リョウマは操られるのを防ぐために自らゼウスをログアウトしたのであって、俺が物理的に通信を禁じたわけではなかったのだ。

 その結果、どうやらリョウマは、俺たちが強制した目隠しの最中にゼウスへログインして、俺がログインしている可能性が濃厚なタイミングについて、まんまと仲間に送信していたらしい。ついでに、さやの能力も、俺の家も、きっとバレているだろう。敵は「待っている」なんて言っていたが、まともに信用してはいけない。

 ということで、俺は引っ越しを余儀なくされる。
 どこへ行こうか、と迷いながら俺はベッドを背もたれ代わりにして床に座りながらタバコを吸う。
 すると玄関ドアがバターン! と開き、

「ぃやっほーっ! リオちゃんだよっ」

 と、いつものようにポーズをとりながら元気よく入ってくる女子高生。

 こいつは、とうとう日常的に俺の部屋へ入り浸るようになってしまった。こんなにズカズカ男の部屋に入ってくるなんて、一体どういうつもりなのだろうか。

 とか思いながらも、リオが身に纏っている制服、つまり、紺のブレザーと短いチェックのスカートが、どうしようもなく俺の心臓をバクバクさせる。これは間違いなく、不遇な俺の中学・高校生活のせいだ。女子高生の制服は俺の憧れの象徴、光り輝く青春そのもの。

「えっと。何の用?」
 
 平静を装って問いかける俺。できる限り声を低くする。
 リオは不満そうな顔をして、
 
「ちょっと冷たくない? こんな可愛い女子高生を前にして」
「女子高生なんだから、ピンクの髪はダメでしょ。真面目にしろって」
「はあ? 髪の色と真面目かどうかに、どういう相関関係があるっての? 証明できんの?」

 なんで、人んちへ勝手に入ってきた女子高生に、詰められないといけないのか。
 俺は何とか大人としての威厳を保つため、

「はいはい。そんで? 何の用だって言ってんの」

 あしらうように、すまして言ってやる。

「あー、言い返せないからって、そうやってごまかすんだ。相手に説教するつもりならねぇ、理由くらい、せめて煮詰めてから言ってくれる?」

 全く見逃してくれないリオ。

「見ず知らずの独身者の男の家に入り浸るのはどうかと思うよ」
「見ず知らずって何!? あなたの死を看取みとる関係になるところだったのに! ひどい」

 こんなことを言って目を潤ませたりするから、俺はどうも調子が狂う。
 
「あのね。俺は忙しいの。用が無いなら帰ってくれる?」
「ネムも忙しいことがあるんだ。何してんの?」
「俺は年中、忙しいよ、仕事から帰ってくるのはいつも深夜だし。しばらく違うところに行こうかと思って」
「もっと要領よくやったら早く帰れる、とかじゃないよね? えっ、どこ行くの」
「…………」

 もう話す気力が萎えしまった。しばらく無視してやろうと、俺は黙り込む。

「ねえ」
「…………」
「ねえったら」
「…………」

 ざまみろ。俺をバカにするからだ。
 と、後ろを向いた俺がニヤニヤしながら愉悦に浸っていると。 
 リオは、俺の後ろから抱きついてきた。

「なっ! ちょっ……」

 振り払って、慌てて振り向くと、今度は正面から抱きついてくる。
 リオは、至近距離からじっと見を合わす。
 こんな手を使うなんて卑怯だ! と俺は心の中で毒づき、目線をあちこちに飛ばしながら、顔が熱くなっていくのを必死にこらえた。

「……ねえ。どこへ、いくの」
「言わない」
「教えて」
「言わない」
「言わないなら、キスする」
「はあっ? なっ、なにっ、」

 リオは、ガッチリと俺の首の後ろに両手を回して、真剣な顔だ。
 唇と唇の距離が、ほんの二〇センチくらいしかない。
 
「わ、わかったっ! わかったから、離して」
「言ったら離す」

 リオは、じわじわ顔を近づけようとする。
 俺は自分からリオを抱きしめることで、自分の顔をリオの顔の真横へ持っていく。これでなんとかキスは回避した格好だ。
 しかし、逆にリオの胸が俺の身体に押し当てられる。案外大きいリオの胸に、俺の気持ちはどうしようもなく乱れてしまった。

「はあ、はあ。何なの、本当にもう」
「……教えてよ」
「まだ決まってないよ。それに、たぶん一日か二日間くらいだから」
「なんで?」
「いやあ……」

 リオは俺をベッドに押し倒した。
 上から俺を覗き込むリオは、真剣なのかふざけてるのかわからない表情で、それが余計に俺の気持ちを掻き乱す。

「あの。リオさん?」
「言わないとキスする」
「言います!」
「えーっ? 何でそんなにすぐ白状するの? したくないの?」
「だって君は女子高生でしょ」
「愛があれば大丈夫だって」
「無いから、愛」
「ひどい! あたしはあるよ、愛」

 会話がめちゃくちゃすぎる。
 とりあえず、敵と戦うことになったことは白状した。

「じゃあ、余計にあたしと協力関係を築いておくべきじゃない?」
「まあ、そりゃあ……」

 確かに、こうなってしまったからには、リオにも手伝ってもらう方が、こいつを大人しくさせるには有効だ。あえて当たり障りのない役目を頼めば一石二鳥だし。

「そんで? また、薬が切れそうになったら、飲ませればいいの?」

 その問いに対する答えは、もう俺の中で決まっていた。
 
「そんなことはしなくていい。君は、ただ、俺の容体が危険だと思ったら救急車を呼んでくれたらいいよ」
「でも、それじゃ……どうするの?」
「飲む時には、自分で飲む」

 当たり前と言えば当たり前のこと。
 こんなハタチにもなっていない女の子に、俺を殺せと言うなんて、ひどい大人もいたもんだ。
 
「……どうして? あたし、構わないよ」
「君のこと、殺人犯にはしない」
「…………」

 どういう心境かわからない顔をするリオ。
 ちょっとだけ眉間にシワが寄って、俺のことをじっと見て。
 でも、怒ってはいないと思った。

「うん。でも、何かお願いがあったら、遠慮なく言ってよね」

 俺の部屋の冷蔵庫をおもむろに開け、中にあるペットボトルのお茶を勝手に飲み始める。靴下を片方ずつ脱ぎ、ポイっとそこら辺に放ってくつろぐ彼女に、俺は尋ねる。

「ありがと。本当に助かるよ。ねえ、一つ教えて欲しいんだけど」
「ん? なに?」
「あの遊園地にいた時、どうして俺に、ついてこようと思ったの?」

 ずっと不思議に思っていた。
 当然だが、こんな可愛い女子高生が俺についてくる理由として、「俺のことを男として気になったから」なんてあるはずがないのだ。そんなの、これまでの人生で身に染みて知っている。

「ん──……。なにか、不思議な感じがして」
「どういうことだよw」
「特別な何かを感じた、というか。でも、それ、合ってたでしょ」
「そうだね。『神の力』を感じ取った、ってとこかな。そうだとすると、君のセンサーは大したもんだよ」
「でも、今は、そんなんじゃないかな」
「へえ。じゃあ、何なの」

 リオはニコッとした。

「そろそろさぁ、のらりくらりとかわすのやめて、どこにいくか教えてくれる? じゃないと……」
「ちょ、待って! わかった! そうだなあ……ホテルでも行くかぁ」
「ホテルに二人っきり、だね」

 あっ、と俺も自分の失言に気付かされる。

「ごめん! ダメだな。他のところ、考えるよ」
「いいよ。ホテルで」
「ダメ」
「ネムってさ、案外、倫理観を重要視するよね。欲望はないの? あたしのこと、めちゃくちゃにしたいとか思わない?」

 その言い方に、つい胸をざわつかせてしまった俺は、リオの胸とスカートに目を這わせた。
 すぐに別の景色へ視界を移したが、その仕草をリオには気付かれてしまい。

「ホテルにする。絶対に」

 目を細めてニヤッとしながら謎の決意表明をするリオに、俺はタジタジしてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~

海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。 再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた― これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。 史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。 不定期更新です。 SFとなっていますが、歴史物です。 小説家になろうでも掲載しています。

処理中です...