90 / 145
7月と赤い果実
7月と赤い果実 7
しおりを挟む
ひとけの無い洗面所に連れて行かれ、クルトに促されるまま、ジャムでべたべたになった手を洗う。冷たい水で汚れを洗い流しているうちに、徐々に頭も冷えてきた。
鏡を見ると、イザークに踏まれたあたりにじわりと染みができていた。
「まさか……」
慌ててマフラーを外すと隅々まで調べる。
よかった。こっちは汚れていないみたいだ。
安堵していると、その様子を見ていたクルトが口を開く。
「おい、あの二年生と一体何があったんだ?」
「ええと、イザークにジャムをすり替えられて、それを問い詰めたらあんな事に……」
簡単に事情を話すと、クルトが眉を吊り上げた。
「はあ? そんなくだらない事で、あんな大騒ぎしたのか?」
わたしが頷くのを見て、クルトは呆れたように天を仰ぐ。
「信じられない……たかがジャムが原因で取っ組み合いにまで発展するなんて、まるで子供の喧嘩……いや、実際お前は子供だから仕方ないのかもしれないが」
「『たかが』じゃありません! わたしにとっては大問題です!」
わたしはヴェルナーさんにもジャムを食べさせてしまった事を説明する。
「おかげでヴェルナーさんのわたしに対する信頼は地に落ちたも同然ですよ」
「大袈裟すぎる……」
「それじゃあ、考えてみてください。もしクルトがわたしと同じような状況にあったとして、知らなかったとはいえ、ロザリンデさんにとんでもなくまずいものを食べさせてしまったとしたら?」
「決して許されないな」
「そうでしょう!? これは非常に忌むべき罪ですよ! いつか、イザークの部屋のドアノブにジャムを塗りたくって、べったべたにしてやります!」
「よくもそんな地味に気持ちの悪い嫌がらせを思いつけるな……くれぐれも俺にはするなよ」
気味悪そうに口元を手で覆うクルトを尻目に、わたしは先ほど思った疑問を口にする。
「でも、さっきはどうしてアルベルトが丁度よくあそこにいたのかな……」
「俺が呼んだ。お前があの二年生と揉めてるって聞いたから」
「クルトが?」
「二年生が相手じゃ、一年の俺が何か言っても相手にされないかもしれないだろう? だから、あの三年生になんとかしてもらおうと思って。年長者の彼は自分の「家族】を監督する役割もあるだろうし、こういう時に出てきてもらわないとな」
そうだったのか。
そういえば人も集まっていたけれど、そんなに騒がしかったのかな……
「けれど、お前たちみたいなのが【家族】だなんて、あの三年生も災難だな。こんな騒ぎを起こされて、堪ったもんじゃないだろう」
クルトがやれやれといった様子で肩をすくめたので、わたしは口を尖らせる。
「元はといえばイザークが悪いんですよ。あの人があんな事しなければ、わたしだって……」
先ほどの事を思い返すと腹立たしい。
でも、どうしてあの人はあんな嫌がらせをするんだろう。
まさか、本当にさっき言ってたように、生意気だからだとか、そんな理由で?
「ともかく」
周囲に誰もいないことを確認した上で、クルトが声を落とす。
「お前も無茶するなよ。年上の男に腕力で敵うわけがないんだ。さっきだって、下手をすれば怪我してたかもしれないんだぞ」
「え、ええと……ごめんなさい」
謝りながらも、イザークに掴みかかられたときの感覚を思い出して、つい口を開く。
「でも、あの人、案外非力でしたよ。わたしも家にいた頃は、きょうだいと喧嘩することもありましたけど、あの人は弟と同じくらいの強さですね。やっぱり、温室育ちのお坊ちゃんは鍛えられてないのかな」
「何をのんきなことを……お前、全然懲りてないな。相手が咄嗟に力を抜いていた可能性だってあるだろう? お前は小柄だし、本気を出したらまずいと思ったのかもしれない。校内で傷害事件を起こせば問題になるだろうからな」
そうなのかな……
でも、確かに、わたしだってイザークに掴みかかられながらも、頭の片隅では彼の力を推し量っていたのだ。
クルトの言うとおり、イザークだってあの激昂状態にありながら、どこかで理性が働いて無意識に手加減していたのかもしれない。だとしたら、怪我をせずに済んだのは運がよかったのだろうか。
そんな事を考えながら、首にマフラーを巻きなおした。
それはそれとして――
鏡の中の自分とにらめっこしながら、先ほどのクルトの言葉を思い出し、少し考え込んでしまう。
「小柄」って、やっぱり「貧相」って事なんだろうか……
一日経って、腹立たしさの収まったわたしは、アルベルトの部屋を訪ねた。
「あの、昨日はすみませんでした。あんな騒ぎを起こすつもりはなかったんですけど……」
おずおずと謝ると、アルベルトは首を振る。
「いや、大事にならなくてよかったよ。床はひどい事になってたけど」
そう言ってはくれるが、その顔は少し疲れているようにも見えた。
「それよりも、なんであんな事になったのか教えてくれないかな? なにしろ、あの後イザークのやつに話を聞こうとしたら、彼、何も言わずに部屋に閉じこもってしまってね」
「ええと、それは……」
自分の持ってきたジャムがあの騒ぎの原因の一端だとわかれば、多少なりともアルベルトは気にしてしまうのではないだろうか。
そう考えて口ごもっていると、アルベルトは眉をひそめる。
「もしかして、人に話せないような事だったりする? それならオレも無理には聞かないけど……」
「い、いえ、違うんです」
変に誤解されるよりは、素直に話したほうがいいのかもしれない。そう考えて姿勢を正す。
「実は――」
わたしが事の次第を説明すると、話を聞き終わったアルベルトは、なんだか困ったように頭をかく。
「ええと、こう言っちゃなんだけど……そんなことで?」
「……クルトにも言われました。子供の喧嘩みたいだって」
「あ、いや、君の気持ちもわかるけど……オレはてっきり、もっと深刻なものかと……」
クルトも呆れていたけれど、他人からするとくだらない事なんだろうか。
それで怒る自分は、もしかして心が狭いのかな……?
そんな事を考えていると、アルベルトが溜息を漏らす。
「でも、なんでイザークも、君に対してそんな幼稚な嫌がらせをするんだろうな。確かに、世の中にはなんとなく虫が好かない相手っていうのは存在するけど、それならそれで距離を置けば良い話なのに。あ、君が彼にとってその『虫が好かない相手』かどうかはわからないけどね。たとえばの話」
「それについては、わたしも考えたんですが……」
「なにか心当たりでも?」
「前に、わたしの家はきょうだいがたくさんいたって話をしましたよね?」
頷くアルベルトを見ながらわたしは続ける。
「その中でも小さい妹や弟の話なんですが……新しいきょうだいができると、わざと騒ぎを起こしたりする子がいるんです。今までいなかった子供が新しく家族の一員に加われば、自然とみんなの関心はその子に向きますよね。それが気に食わなくて、自分に注目して欲しくて、それで騒ぎを起こすんです。わたしは、イザークもそれと似たようなものなんじゃないかって思って。【家族】にわたしという存在が加わったことで、他のメンバーの関心がわたしに移ることに我慢できなくなって、それで、あんな嫌がらせを……」
「ちょっと待って。『他のメンバー』って、オレの事?」
その問いにわたしは頷く。
「そうです。あれでいて、イザークはアルベルトのことを兄のように慕っているんじゃないかと思ったんです」
「ええ? それにしちゃ、彼のオレに対する態度は結構ひどいと思うけどなあ……」
「案外、それがあの人なりの親しみの表現なのかもしれませんよ。わたしの身近なところにも、怒ってるように見えて、実は心配してくれてたって人がいますから」
「うーん、そうかなあ……」
アルベルトはいまいち納得できない様子で首を傾げている。
「でも、仮にそうだったとしても、君だって、そんな理由で嫌がらせされるのは堪ったものじゃないだろ?」
「ええ、まあ、そうですね……」
「だよなあ……どうしたものかな」
暫く考えていた様子だったが、答えは出なかったのか、お手上げといった様子で溜息をつく。
「とりあえず、こんな事が起こった以上、ジャムをお土産にするのはやめたほうが良いかもしれないなあ。昨日みたいに瓶が割れたら危険だし」
「えっ、そんな。それじゃあ、わたしはもうアルベルト自慢のジャムを口にする事ができないんですか!? 今回は食べ損ねたから、次こそはと思っていたのに……ああ、食べられないと思ったら余計食べたくなってきました」
それを聞いたアルベルトは笑い声を洩らした。
「そんなたいしたものじゃないよ……でも、そんなに言ってくれるなら、考え直してみようかな」
「ほんとですか!?」
「うん。どうせ、次で最後になるだろうしね」
「最後?」
「ほら、オレはあと半年もすれば卒業だからさ。その間、休暇といえば春休みくらいしかないだろ?」
「あ……」
そうか。三年生のアルベルトはもうすぐこの学校から去ってしまうのだ。
なんだか寂しい……
孤児院にいた頃も、何人ものきょうだいたちが巣立っていった。その度に別れを経験したけれど、何度繰り返しても、やっぱり寂しい。
それと同じような気持ちを、アルベルトに対しても抱いているのかもしれない。
あれ、でも……と、わたしはふと気付く。
アルベルトがいなくなってしまったら、【家族】はどうなるんだろう。正直なところ、イザークとうまくやっていく自信が無い。
そう考えた途端、なんだか胃のあたりが重くなったような気がした。
せめて、次に入学してくる一年生が、いい人でありますように……
(7月と赤い果実 完)
鏡を見ると、イザークに踏まれたあたりにじわりと染みができていた。
「まさか……」
慌ててマフラーを外すと隅々まで調べる。
よかった。こっちは汚れていないみたいだ。
安堵していると、その様子を見ていたクルトが口を開く。
「おい、あの二年生と一体何があったんだ?」
「ええと、イザークにジャムをすり替えられて、それを問い詰めたらあんな事に……」
簡単に事情を話すと、クルトが眉を吊り上げた。
「はあ? そんなくだらない事で、あんな大騒ぎしたのか?」
わたしが頷くのを見て、クルトは呆れたように天を仰ぐ。
「信じられない……たかがジャムが原因で取っ組み合いにまで発展するなんて、まるで子供の喧嘩……いや、実際お前は子供だから仕方ないのかもしれないが」
「『たかが』じゃありません! わたしにとっては大問題です!」
わたしはヴェルナーさんにもジャムを食べさせてしまった事を説明する。
「おかげでヴェルナーさんのわたしに対する信頼は地に落ちたも同然ですよ」
「大袈裟すぎる……」
「それじゃあ、考えてみてください。もしクルトがわたしと同じような状況にあったとして、知らなかったとはいえ、ロザリンデさんにとんでもなくまずいものを食べさせてしまったとしたら?」
「決して許されないな」
「そうでしょう!? これは非常に忌むべき罪ですよ! いつか、イザークの部屋のドアノブにジャムを塗りたくって、べったべたにしてやります!」
「よくもそんな地味に気持ちの悪い嫌がらせを思いつけるな……くれぐれも俺にはするなよ」
気味悪そうに口元を手で覆うクルトを尻目に、わたしは先ほど思った疑問を口にする。
「でも、さっきはどうしてアルベルトが丁度よくあそこにいたのかな……」
「俺が呼んだ。お前があの二年生と揉めてるって聞いたから」
「クルトが?」
「二年生が相手じゃ、一年の俺が何か言っても相手にされないかもしれないだろう? だから、あの三年生になんとかしてもらおうと思って。年長者の彼は自分の「家族】を監督する役割もあるだろうし、こういう時に出てきてもらわないとな」
そうだったのか。
そういえば人も集まっていたけれど、そんなに騒がしかったのかな……
「けれど、お前たちみたいなのが【家族】だなんて、あの三年生も災難だな。こんな騒ぎを起こされて、堪ったもんじゃないだろう」
クルトがやれやれといった様子で肩をすくめたので、わたしは口を尖らせる。
「元はといえばイザークが悪いんですよ。あの人があんな事しなければ、わたしだって……」
先ほどの事を思い返すと腹立たしい。
でも、どうしてあの人はあんな嫌がらせをするんだろう。
まさか、本当にさっき言ってたように、生意気だからだとか、そんな理由で?
「ともかく」
周囲に誰もいないことを確認した上で、クルトが声を落とす。
「お前も無茶するなよ。年上の男に腕力で敵うわけがないんだ。さっきだって、下手をすれば怪我してたかもしれないんだぞ」
「え、ええと……ごめんなさい」
謝りながらも、イザークに掴みかかられたときの感覚を思い出して、つい口を開く。
「でも、あの人、案外非力でしたよ。わたしも家にいた頃は、きょうだいと喧嘩することもありましたけど、あの人は弟と同じくらいの強さですね。やっぱり、温室育ちのお坊ちゃんは鍛えられてないのかな」
「何をのんきなことを……お前、全然懲りてないな。相手が咄嗟に力を抜いていた可能性だってあるだろう? お前は小柄だし、本気を出したらまずいと思ったのかもしれない。校内で傷害事件を起こせば問題になるだろうからな」
そうなのかな……
でも、確かに、わたしだってイザークに掴みかかられながらも、頭の片隅では彼の力を推し量っていたのだ。
クルトの言うとおり、イザークだってあの激昂状態にありながら、どこかで理性が働いて無意識に手加減していたのかもしれない。だとしたら、怪我をせずに済んだのは運がよかったのだろうか。
そんな事を考えながら、首にマフラーを巻きなおした。
それはそれとして――
鏡の中の自分とにらめっこしながら、先ほどのクルトの言葉を思い出し、少し考え込んでしまう。
「小柄」って、やっぱり「貧相」って事なんだろうか……
一日経って、腹立たしさの収まったわたしは、アルベルトの部屋を訪ねた。
「あの、昨日はすみませんでした。あんな騒ぎを起こすつもりはなかったんですけど……」
おずおずと謝ると、アルベルトは首を振る。
「いや、大事にならなくてよかったよ。床はひどい事になってたけど」
そう言ってはくれるが、その顔は少し疲れているようにも見えた。
「それよりも、なんであんな事になったのか教えてくれないかな? なにしろ、あの後イザークのやつに話を聞こうとしたら、彼、何も言わずに部屋に閉じこもってしまってね」
「ええと、それは……」
自分の持ってきたジャムがあの騒ぎの原因の一端だとわかれば、多少なりともアルベルトは気にしてしまうのではないだろうか。
そう考えて口ごもっていると、アルベルトは眉をひそめる。
「もしかして、人に話せないような事だったりする? それならオレも無理には聞かないけど……」
「い、いえ、違うんです」
変に誤解されるよりは、素直に話したほうがいいのかもしれない。そう考えて姿勢を正す。
「実は――」
わたしが事の次第を説明すると、話を聞き終わったアルベルトは、なんだか困ったように頭をかく。
「ええと、こう言っちゃなんだけど……そんなことで?」
「……クルトにも言われました。子供の喧嘩みたいだって」
「あ、いや、君の気持ちもわかるけど……オレはてっきり、もっと深刻なものかと……」
クルトも呆れていたけれど、他人からするとくだらない事なんだろうか。
それで怒る自分は、もしかして心が狭いのかな……?
そんな事を考えていると、アルベルトが溜息を漏らす。
「でも、なんでイザークも、君に対してそんな幼稚な嫌がらせをするんだろうな。確かに、世の中にはなんとなく虫が好かない相手っていうのは存在するけど、それならそれで距離を置けば良い話なのに。あ、君が彼にとってその『虫が好かない相手』かどうかはわからないけどね。たとえばの話」
「それについては、わたしも考えたんですが……」
「なにか心当たりでも?」
「前に、わたしの家はきょうだいがたくさんいたって話をしましたよね?」
頷くアルベルトを見ながらわたしは続ける。
「その中でも小さい妹や弟の話なんですが……新しいきょうだいができると、わざと騒ぎを起こしたりする子がいるんです。今までいなかった子供が新しく家族の一員に加われば、自然とみんなの関心はその子に向きますよね。それが気に食わなくて、自分に注目して欲しくて、それで騒ぎを起こすんです。わたしは、イザークもそれと似たようなものなんじゃないかって思って。【家族】にわたしという存在が加わったことで、他のメンバーの関心がわたしに移ることに我慢できなくなって、それで、あんな嫌がらせを……」
「ちょっと待って。『他のメンバー』って、オレの事?」
その問いにわたしは頷く。
「そうです。あれでいて、イザークはアルベルトのことを兄のように慕っているんじゃないかと思ったんです」
「ええ? それにしちゃ、彼のオレに対する態度は結構ひどいと思うけどなあ……」
「案外、それがあの人なりの親しみの表現なのかもしれませんよ。わたしの身近なところにも、怒ってるように見えて、実は心配してくれてたって人がいますから」
「うーん、そうかなあ……」
アルベルトはいまいち納得できない様子で首を傾げている。
「でも、仮にそうだったとしても、君だって、そんな理由で嫌がらせされるのは堪ったものじゃないだろ?」
「ええ、まあ、そうですね……」
「だよなあ……どうしたものかな」
暫く考えていた様子だったが、答えは出なかったのか、お手上げといった様子で溜息をつく。
「とりあえず、こんな事が起こった以上、ジャムをお土産にするのはやめたほうが良いかもしれないなあ。昨日みたいに瓶が割れたら危険だし」
「えっ、そんな。それじゃあ、わたしはもうアルベルト自慢のジャムを口にする事ができないんですか!? 今回は食べ損ねたから、次こそはと思っていたのに……ああ、食べられないと思ったら余計食べたくなってきました」
それを聞いたアルベルトは笑い声を洩らした。
「そんなたいしたものじゃないよ……でも、そんなに言ってくれるなら、考え直してみようかな」
「ほんとですか!?」
「うん。どうせ、次で最後になるだろうしね」
「最後?」
「ほら、オレはあと半年もすれば卒業だからさ。その間、休暇といえば春休みくらいしかないだろ?」
「あ……」
そうか。三年生のアルベルトはもうすぐこの学校から去ってしまうのだ。
なんだか寂しい……
孤児院にいた頃も、何人ものきょうだいたちが巣立っていった。その度に別れを経験したけれど、何度繰り返しても、やっぱり寂しい。
それと同じような気持ちを、アルベルトに対しても抱いているのかもしれない。
あれ、でも……と、わたしはふと気付く。
アルベルトがいなくなってしまったら、【家族】はどうなるんだろう。正直なところ、イザークとうまくやっていく自信が無い。
そう考えた途端、なんだか胃のあたりが重くなったような気がした。
せめて、次に入学してくる一年生が、いい人でありますように……
(7月と赤い果実 完)
0
お気に入りに追加
175
あなたにおすすめの小説

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
この満ち足りた匣庭の中で 三章―Ghost of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
幾度繰り返そうとも、匣庭は――。
『満ち足りた暮らし』をコンセプトとして発展を遂げてきたニュータウン、満生台。
その裏では、医療センターによる謎めいた計画『WAWプログラム』が粛々と進行し、そして避け得ぬ惨劇が街を襲った。
舞台は繰り返す。
三度、二週間の物語は幕を開け、定められた終焉へと砂時計の砂は落ちていく。
変わらない世界の中で、真実を知悉する者は誰か。この世界の意図とは何か。
科学研究所、GHOST、ゴーレム計画。
人工地震、マイクロチップ、レッドアウト。
信号領域、残留思念、ブレイン・マシン・インターフェース……。
鬼の祟りに隠れ、暗躍する機関の影。
手遅れの中にある私たちの日々がほら――また、始まった。
出題篇PV:https://www.youtube.com/watch?v=1mjjf9TY6Io
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】限界離婚
仲 奈華 (nakanaka)
大衆娯楽
もう限界だ。
「離婚してください」
丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。
丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。
丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。
広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。
出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。
平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。
信じていた家族の形が崩れていく。
倒されたのは誰のせい?
倒れた達磨は再び起き上がる。
丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。
丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。
丸田 京香…66歳。半年前に退職した。
丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。
丸田 鈴奈…33歳。
丸田 勇太…3歳。
丸田 文…82歳。専業主婦。
麗奈…広一が定期的に会っている女。
※7月13日初回完結
※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。
※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。
※7月22日第2章完結。
※カクヨムにも投稿しています。
ダブルの謎
KT
ミステリー
舞台は、港町横浜。ある1人の男が水死した状態で見つかった。しかし、その水死したはずの男を捜査1課刑事の正行は、目撃してしまう。ついに事件は誰も予想がつかない状況に発展していく。真犯人は一体誰で、何のために、、 読み出したら止まらない、迫力満点短編ミステリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる