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触
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私の前髪が知らない電車の空調の風に
そして私は過去に触れる
記憶の中にある前髪を揺らされた時のこと
じっくりと目を閉じて辿る
骨格のしっかりとしたあなたが
目の前に立って
最近切ったばかりの私の前髪に触れる
「大丈夫?気分悪い?」
あなたの声をトリガーに、
心の中にある本質に触れる、揺れる
暗闇を辿っていたいのに
マスクの下は無表情のまま
反対側の夕陽が眩しいふりをする
「大丈夫だよ」と言った自分の声が
震えてないか
反対側のサラリーマンの表情を見て確かめる
側から見れば幸せそうだと思うだろうか
あなたの左手が私のぶら下がった手に触れる
彼の手は震えていなかった
私の心はこんなにも虚しいのに
私は彼の核心に触れる
「いつまでこうしてるつもりなの?」
あなたの左手の薬指にある指輪に触れる
くるくるとなぞっても関節で止まってしまう
知らない街の知らない電車で二人きり
彼だけの左手薬指に触れる人は一人もいない
私だけない左手薬指に
どうしてですか?と触れる人もいない
彼は後ろからさす夕陽に照らされてしまって
逆光で表情すら見えない
けど、きっと微笑んでいる
私の右手に触れながら
眩しいふりして睨み付ける私を
その瞳の淵に浮かぶ涙を見て
彼は、裏切りを繰り返して快感に触れる
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