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毎朝起きたら私はいい子ですと唱えます
しおりを挟む「私はいい子です」
見上げた天井に私は声を投げる
目覚めたばかりの声は頼りない
セミの声の方がよっぽどしっかりしている
夏だ
言霊を信じている
もう随分な年齢になったのに
ベッドの横にクマもいる
「私はいい子です」
次は良かった
部屋に響いた自分の声が自分にまで届いて
暗示がかかる、私はいい子です
残虐な過去も
憂鬱な日々もくそくらえだ
私はいい子だから
ダメージなんて言葉を知らない
人を傷つけることは知っていても
傷つけられることなど知り得ない
私はいい子だから
布団にくるまって思い出す肉厚のある手を
私を撫でたあの暖かさを
かつては言われていた褒め言葉を
私は自身を奮い立たせるために
暗示として使うのだ
この先もずっと
8月になるとあなたが帰るらしいので
花を添えて、香りの良い線香を
墓石か位牌か何かわからないけど撫でとくよ
何も掴んでいないこの薄い手のひらで
深く深呼吸をすると
何故だかあなたの匂いがした
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