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愛知らず
しおりを挟む本当に愛されることが何かを知らない
のかも知れない、と思いながら
水を吐き出す蛇口を見つめていた
思考が巡って止まることはなかった
駆け上がった階段に足が痺れているのか
愛情不足なのかわからなかった
女子高生のスカートのプリーツを見て
就活生の硬い皮の鞄を見て
むせ返るアーモンドの匂いがする
クッキー屋の横を歩いて
ずっと愛されるって何かを考えていた
「点字ブロックの上に物を置かないでください」
という機械音のアナウンスが
やけに耳に残って離れなくて
それでもずっと愛されることについて考えていた
ピンク色のヘアートリートメントを買って
露店のベビーカステラを買って
お釣りをぼんやりと見つめて受け取った
私はその確かな形を知らないのかもしれない
もし受け取ったって
その価値に気がつけないかもしれない
しわしわの二千円を見て
レシートだらけの財布にしまう
受け取る器は十分にあるのに
何度も何度も受け取ってきたはずなのに
携帯の画面の中に
閉じこもったままのあなたを見つめて
愛が足りないよと念じた
エスカレーターの始まりと終わりで
立ち止まる人を睨みつけて
誰でも愛せるうちは
誰にでも憎しみを向けれるうちは
きっと私が愛されることはないと思った
身体がひどく乾いているのに
涙は流せるのに
私はずっと同じところにいるのに
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